令和1年 中小企業診断士2次試験 事例Ⅰの考察

12月6日、中小企業診断士2次試験(筆記)の合格発表です。模範解答の発表がない試験、かつ自分が何を書いたのか覚えていない状況なのでモヤモヤ感MAXです。もし合格だと12月15日に口述試験があるので勉強をし直さなければならず、もし不合格だとしばらくこの勉強をしないだろうから、今のうちに問題を見直し、自分なりの考察を残しておこうと思います。まずは事例Ⅰ

 

(1)概要:農業用機械・産業機械を製造する同族会社。社員80名。3代目社長入社当時の90年代から葉たばこ乾燥機事業が下降、2000年代に存続問題となる→メンテナンス事業に取り組むがうまくいかない→作物や加工食品の乾燥装置事業に着手、古参社員の反発。3代目社長就任後、新体制発足、経営改革に取り組む(高コスト体質の見直し、高齢者の人員削減)、新事業開発の体制強化→HP立ち上げ、モノを送ってもらう試験乾燥サービスで成功。組織は本社(製造部、開発部、総務部)と7営業部の機能別組織を維持。

(2)第1問:「A社長がトップに就任する以前のA社は、苦境を打破するために、自社製品のメンテナンス事業化に取り組んだ。それが結果的にビジネスとして成功しなかった最大の理由は何か? 100字以内」
補助金じゃぶじゃぶの生産業者向け事業の中、たばこ需要が激減したのだから、葉たばこ乾燥機も激減するのでメンテナンス事業がうまくいかない。こんな簡単な解答で良いのか心配です。よく考えると、葉たばこ乾燥機がどんどん売れていた時はメンテナンスしていなかった(販売店任せ?)のかと疑問が出る。販売店任せで部品や修理技術提供だけしていたとすると、A社が直接メンテナンスに乗り出すと、販売店は売上減になり軋轢が発生する、販売店と長い付き合いの古参社員は反発するのが当然。 このあたりが解答だったのかな? 

(3)第2問:「A社長を中心とした新経営陣が改革に取り組むことになった高コスト体質の要員は、古い営業体質にあった。その背景にあるA社の企業風土とはどのようなものであるか?100字以内」
コスト意識が低く、利益獲得を軽視、人間関係と過去のやり方を重視し、希求水準を下げた企業風土などと、ずらずら書いた筈。しかし、気になったのはその後の高齢者を対象とした人員削減の状況。10歳程度も平均年齢を下げるには、仮に120名から80名だとしてシミュレーションしてみると、削減した40名分を60歳以上にしないと10歳も若返らない。これって、かなり凄まじいリストラでしょう。苦渋の決断という記載はあるけど、地方農村で人間関係が濃い中で、かなり酷い衝突や感情論があった筈。引退した2代目社長と共に硬軟合わせ技で説得したのかも? これをやり抜き、残った社員のモチベーションを引き上げた3代目社長はスーパー社長にような気がしてきます。

(4)第3問:「A社は、新規事業のアイデアを収集する目的でHPを立ち上げ、試験乾燥サービスを展開することによって市場開拓に成功した。自社製品やサービスの宣伝効果などHPに期待する目的・機能とな異なる点に焦点を当てたと考えられる。その成功の背景にどのような要因があったか?100字以内」
要因は、農作物乾燥機の「モノ」の販売ではなく、農作物などを乾燥させる「コト」のサービスに転換させたこと、加えて、営業による効果的なプレゼンテーションにより潜在的なニーズを喚起させた、みたいなことを書いたけど点数がつくのか心配。

後で調べてみたら、このA社は山口市にある、複数省庁から賞され、現天皇陛下も皇太子として訪問したことがある有名中小企業ではないかと思います。与件文では「試験乾燥」サービス自体が成功したような記述ですが、これはあくまでも少量の試験であり、往復送料顧客負担、基礎データだけ提供、一社一回のみの真にお試しです。実際に乾燥機を売って収益を上げており、7営業所の営業が、試験乾燥の紹介・実施から本体受注へと、飛込み営業をしながら、新規顧客開拓をした努力の結果だと感じます。新規顧客開拓というのは本当に大変です。 また、そもそも長年の乾燥機開発や4工程の一貫体制による生産ノウハウ、そして灯油燃費効率向上の研究成果は、3年程度で出来上がるものではないような気もします。 だから、「営業部隊のプレゼンテーションが功を奏したことはゆがめない事実」というのは意図的な矮小化のような気がする。

(5)第4問:「新経営陣が事業領域を明確にした結果、古い営業体質を引きずっていたA社の営業社員が、新規事業の拡大に積極的に取り組むようになった。その要因として、どのようなことが考えられるか?100字以内」
3代目社長のリーダーシップの下、ビジョンの共有や賞与によるモチベーション向上に触れながら、内発的動機づけを中心に解答すべきだったような気がする。しかし、内発的動機づけの具体的なヒントが与件文に見当たりません。古参社員が退職したことにより、厳しいリストラを見た若手営業にとってビッグチャンスとなり、実力を発揮したというようなことを書いたことを思い出しました。 これを何と表現するべきか適当な単語(知識)がでてこなかった印象。職務充実だったのかな? 一方、設問には関係ないけど、「減価償却も済み、補修用性能部品の保有期間を過ぎた過剰在庫」の表現には違和感を感じた。 減価償却は経理的・税務的なことであり、顧客が何年で償却するのかと、補修部品の在庫期間とは直接的な関係はないと思う。一般に設備産業でなく家電製品であっても最終生産月から10年程度は主要部品を保有します。顧客にとっては償却済みだから利益が大きくなるのに、メーカーが過剰部品を処分しメンテナンスができないと聞いたらふざけんなって大事になりそうです。実際、このA社であろう企業は今も葉たばこ乾燥機を生産しています。 これも試験用の表現なのか?

(6)第5問:「A社長は、今回、組織改編を経営コンサルタントの助言を熟考した上で見送ることとした。その最大の理由として、どのようなことが考えられるか?100字以内」
これは機能別組織がうまく機能しているからで、事業部組織やマトリックス組織にする必要性が無いからですが、試験なので機能別組織のメリットをずらずら書いた気がします。試験中、引っかかったのが「A社長は熟考の末」と表現していること。 熟考せずともすぐに機能別組織をいじる必要性は無いと考えるのは短絡的なのか、与件文に何か見落としたヒントがないか最後まで与件文を読んでしまいました。

 

最後に、日本のたばこ市場を調べてみると、過去10年でたばこの販売本数は3兆本→1兆本へ激減。その中でJTは売上2兆円程度キープ、経常が25%の5,000億円もあります(羨ましい)。売上の6割以上が海外事業(積極的M&Aの結果)。たばこ以外の事業規模はあまり伸びていない。現在の株価は約2500円でピークの4850円の半分レベル。PERもPBRも比較的低く、配当利回りは6%もある。 最大の株主(33%)は麻生財務大臣なんですね。このA社にとって、JTの海外工場へ葉たばこを供給する生産者向け乾燥機を売らないのかなって気になります。高価な設備によって乾燥させなくても自然乾燥で十分なのかもしれません。また、灯油の燃料効率向上(内容がよくわからないけど)って、家庭用暖房機に使えないのか気になります。急に寒くなったので石油ファンヒーターを出してきたところです。やっぱり温かいのはいいですね。