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企業経営に影響を与える法律① 不正競争防止法

さくらい行政書士事務所 不正競争防止法

自由経済を尊重されていますが、なんでもかんでも自由に経済活動(事業活動)が許される訳ではないので、不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保するため、国民経済の健全な発展につなげることを目的としています。 消費者保護の性格が強い独占禁止法とともに公正な競争秩序を維持すると共に、知的財産権を保護する側面もあります。

企業戦略=競争戦略であり、同じ市場で競合他社と如何にに戦うかを日々実践することが自然な経済活動なのですが、これ以上はやってはいけない線引きをしているとも言えます。

不正競争行為とは

①(周知表示)混同惹起行為: 他者の名称、商号、商標など、需要者に広く周知されているものと同一、または類似の表示をしたり、そのように表示された商品を譲渡(売買)することで、他者の商品または営業と混同を生じさせる行為です。 譲渡もあるので卸売や小売り、輸入販売も含まれます。

②(著名表示)冒用行為:他者の著名な商品等表示と同一、または類似するものを使用したり、そのような表示をした商品を譲渡(売買)する行為です。 周知と著名の違いは曖昧ですが、日本全国で知られているような場合が著名、隣県の範囲までで知られているような場合は周知といわれます。

③商品形態模倣行為:いわゆるデッドコピーでこれも製造だけでなく譲渡(売買)行為も含まれます。

④営業秘密不正取得等行為:日本は産業スパイ天国と言われます。日本企業・技術者が何年・何十年もかけて研究開発してきた技術やデザインが簡単に盗まれるのか、たまに大きな事件が発覚しますが、それは氷山の一角なのでしょう。また、大企業でも何が営業秘密なのか認識が薄いケースがあるようです。 営業秘密として保護されるための要件は、秘密保持性、有用性、そして非公知性の三つが揃っていないといけません。既に公表している情報や知られても無用な情報は対象外。また、有用な情報であっても社員なら誰でもアクセスできる共有フォルダーに入れていたり、鍵のかからないキャビネットの中に入っていて盗まれても保護されません。

⑤原産地等誤認惹起行為:原産地や生産地を誤認させるような表示をしたり、表示した商品を譲渡(売買)する行為です。

⑥競争者営業誹謗行為:虚偽やダメージになるような風説を意図的に流す行為で、信用毀損行為ともいえます。

 

不正競争行為への対抗措置

不正競争行為をされた場合の対抗措置には

①差止請求:営業上の利益を侵害された、または侵害されるおそれがある場合、侵害行為の停止請求、侵害の予防請求、または侵害にあたる商品や設備などの廃棄・除去を請求することができます。

②損害賠償請求:不正競争行為により利益を侵害した者に対し、民法による不法行為に対する損害賠償ができますが、原告側に損害の立証責任があります。不正競争防止法では損害額の算定規定をもけることで、比較的容易にしています。

③不当利得返還請求:損害賠償請求に加え、不正競争行為によって利益を得た者に対し、権利を侵害された者は利益の返還を求めることができます。

④信用回復措置請求:更に、信用を回復させる措置まで請求できます。具体的には謝罪や新聞広告です。

⑤上記4つは民事上の対抗措置ですが、違法性が高い行為や、外国の国旗や国際機関の標章などの使用は「公共の利益を害する」として刑事罰が適用されることがあります。

 

実務上のポイント

営業秘密に対して過度に反応し、なんでもかんでも「秘」「社外秘」などの社内文書や、取引先との秘密保持契約の対象とするケースもあり得ます。 上記の通り、営業秘密の三要件が揃っていなければ対象外です。

要は営業秘密の適正な管理が重要で、経済産業省の「営業秘密管理指針」が参考になります。

・営業秘密区分と区分ごとに管理方法の設定

・区分ごとのアクセス権者を指定、保管場所の指定

・情報の記憶媒体への秘密性表示、ネットワーク管理やID&パスワードによるアクセス制御など

・秘密管理の基本方針の策定と教育・研修、退職者への秘密保持要請、内部監査など

H29年経産省調査によると、日本の大企業の3は情報漏洩の疑いあり、サイバー攻撃は増加・巧妙化してきているようです。有名な事件はベネッセ(個人情報漏洩)、新日鐵住金や東芝の産業スパイのような事件、日本年金機構の年金情報など深刻な事件が多数あります。情報漏洩のルートとしては、①従業員のミス(44)、②退職者(25)、③取引先(11)ということなので、社員教育が防止策として必要だといえます。