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企業経営に影響を与える法律⑨ 下請代金支払遅延等防止法

さくらい行政書士事務所 下請代金支払遅延等防止法

下請代金支払遅延等防止法は、親事業者(発注者)と下請事業者(受注者、個人事業主含む)の公正な取引を目指し、立場の弱い下請事業者の利益保護を目的として、独占禁止法の特別法として制定されました。

優越的地位の濫用にならないよう、要は下請いじめはやめましょうという法律です。

では、大企業に対する中小企業を守る法律かというと、適用範囲は資本金で規定されており、中小企業同士でも注意が必要なケースが出てきます。また、法律名に「支払遅延」が使われていますが、親事業者の禁止行為は支払に関することではありません。

下請代金支払遅延等防止法の摘要範囲

(1)物品の製造、修理委託の場合

 親事業者が資本金3億円超の場合は、資本金3億円以下の下請事業者が対象

 親事業者が資本金1千万円超、3億円未満の場合は、資本金1千万円以下の下請事業者が対象

(2)情報成果物の作成、役務提供委託の場合

 親事業者が資本金5千万円超の場合は、資本金5千万円以下の下請事業者が対象

 親事業者が資本金1千万円超、5千万円未満の場合は、資本金1千万円以下の下請事業者が対象

資本金1千万円強の中小企業メーカーが、凡そ同規模の資本金1千万円の中小企業メーカーへ発注する場合も適用されることになってしまいます。

親事業者の義務

(1)発注の際は、直ちに必要記載事項が記載された書面を交付する。(口頭で発注することが多い業種、業界がありますが、同法によると、口頭で発注後、直ちに発注書を発行しなければなりません)

(2)親事業者が発注した商品やサービスの給付を受けた日から、60日以内のできる限り短い期間内に下請代金の支払期日を定める義務 (60日でも長い気がします)

(3)下請事業者との取引内容を記載した書類を作成し、2年間保存する義務

(4)親事業者が何らかの理由で支払期日までに支払わなかったときは、遅延利息を支払う義務 (こんな義務をわざわざ法律で規定するということは、支払遅延が多かったのでしょう)

 

親事業者の禁止行為

①受領拒否:発注した物品等の受領を拒むこと

②下請代金の支払い遅延:60日以内の事前に定められた支払期日までに支払わないこと

③下請代金の減額:あらかじめ定めた下請代金を後から減額すること

④強引な返品:

⑤買いたたき:類似品の価格や市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること

⑥購入・利用強制:親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・理容させること

⑦報復措置:下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由として、取引数量の削減、取引停止等の不利益な取扱いをすること

⑧有償支給原材料対価の早期決済:

⑨不当な経済上の利益の提供要請:下請事業者に金銭や労務の提供等をさせること

⑩不当な給付内容の変更、及び不当なやり直し:費用負担せず、注文変更・仕様変更させたり、受領後にやり直しをさせること

どれも「不当」なこと、または「強制」的なことが禁止行為の対象です。最も多い事例は②と③という報告が中小企業庁から出ています。

 

平成28年、世耕さんが経産大臣のときに発表した「未来志向型の取引慣行に向けて」(世耕プラン)における3つの基本方針のもと、「価格決定方法の適正化」「コスト負担の適正化」「支払条件の改善」といった課題に重点をおいているそうです。下請Gメンと呼ばれる調査員が、下請事業者から申告があった場合、親事業者に 対して立入検査や取引調査、下請事業者に対するヒアリ ング調査などを実施していますが、平成30年の中小企業庁の調査では全国で年間800社くらいの立入検査を行い、改善指導を行ったとのことです。

まだまだ、氷山の一部しか見えてないのでしょう。下請の立場としては、親事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁へ申告することを躊躇するケースが想像できます。 そこで中小企業庁では各都道府県に「下請かけこみ寺」を設置しており、下請事業者が相談しやすい窓口を設置しています。こちらの利用者は平成30年で8,000件以上で、毎年相談件数が増えています。