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分かりにくい事業再構築補助金の交付申請

ポストコロナ・アフターコロナの社会で、思いきった新事業・事業転換・業種転換などを行う中小企業に対し、100万円から1億円も補助する巨大予算の事業再構築補助金。第3回公募は9月21日締め切り、あと2回か3回の公募があると見込まれています。

今まで6件の申請書作成支援、および代理申請を行い、全部採択されたので、交付申請の支援も行っています。

 

申請書類の内容や進め方はものづくり補助金と似ているので戸惑いは少なかったのですが、交付申請までくると、分かりにくさが倍化されます。 この事務局に問合せをしてもちんぷんかんぷんばかり、こんあ運営のやり方で大丈夫なのかと不安を感じます。まず第一に、事務局の人達がものづくり補助金の運営ノウハウがまったく無い事です。 こちらが教えてあげることもしばしば起きます。

 

認定経営革新等支援機関の支援が必須

他の補助金と大きく違う要件が、認定経営革新等支援機関の支援により事業計画を作成すること。このサイトでは、ほとんど(3分の2)の認定経営革新等支援機関は無償で対応していることをアピールしているけど、今年始まった新しい補助金と特別な要件なのに、なぜそんなことを言えるのか? 経営革新等支援機関の中の、商工会や商工会議所は会員のみ対応すると表明済み、金融機関は融資の顧客のみの対応がほとんどです。 当職のような個人事業の士業が、経営革新等支援機関に認定されるには、税理士さんを除くと、それなりの実績や準備期間が必要です。認定されても1円も頂けません。 世の中のほとんどの人はその存在すら知らないでしょう。

 

申請者が作成した事業計画書を簡単にチェックして、確認書を発行するだけならたいしたことはないでしょう。しかし、世の中のほとんどの中小企業者が、本補助金の公募要領を読み・理解することだけで一苦労です。 その上で、採択されるレベルの事業計画を仕上げるために、どれほどの労力や時間が掛かるのか、中小企業庁やこの事務局が現実・現場を分かっているのか甚だ疑問です。 内容を掘り下げ、細かい助言、時には調べたり、質疑や面談の時間や回数もどんどん増えます。 

 

結局、当職の場合は認定経営革新等支援機関も兼ねているので、事業計画作成しながら、自問自答を繰り返し、事前着手申請、確認書発行、公募申請の代理、交付申請の支援まですべてやっているような状況です。

 

形だけの電子申請の利用

今年度から持続化補助金もJグランツの電子申請へ移行し、本事業再構築補助金も電子申請のみになっています。2年前に経済産業省が構築した電子申請システムは、経産省関連の申請だけでなく、都道府県の補助金や厚労省の助成金もこの電子申請システムを利用する方向だそうです。

この電子申請には特定のID(GビズID)による事業者登録・管理が可能で、個々の申請の簡素化、事務局とのやり取りのスムーズ化、全体としてのスピードアップ、他の役所のデータベースとのリンクするなどのイメージがありますが、今のところ本事業再構築補助金については真逆です。

 

細かいことですが、自分の申請内容でも採択されれば見えなくなります(消えます)。採択されれば、公募申請時点に打ち込んだデータはExcel(8つのシート)にダウンロードされ、何の書類を提出したのか再確認することもできません。

 

採択後の交付申請では、そのExcelシートをアップロードし、見積書や理由書などの書類はZipフォルダーに固めて一つのファイルのようにしてアップロードする形です。 公募申請の時、確定申告書や個々の書類をひとつずつアップロードしていたことと比べると、急に乱暴なシステムになっています。 そもそもExcelシートにデータを落とし込むのであれば、何のために電子申請システムを使っているのか宝の持ち腐れではないでしょうか? Excelで管理し、マクロを使って集計などをするだけであれば、Jグランツなど使わず、公募申請時点から報告までExcelのやり取りをすれば済むでしょう。そして、このExcelシートは保護をかけまくっていて変更できない部分ばかり、行の高さが変えられないのに内訳を細かく記入しろとなっている。 そもそも、Excelのような不安定なアプリだと、申請者のPC環境によって不具合が起き、データの改ざんや破壊が起きることが心配です。

 

加えて、政府の巨大な電子申請システムならば、財務省、厚労省、法務省などが持っているデータも活用すべきです。3か月以内発行の登記簿、確定申告書のスタンプなど、よく考えたら、電子申請以前とまったく同じで、紙文化のままです。 押印する書類が無くなっただけですね。

 

デジタル庁さん、もっと頑張ってほしいものです。

 

頼りにならないコールセンター

公募要領を読んでも、公募申請時点で確認したいことは多々出てきます。 ところが、ここのコールセンターは一つ尋ねると、5分から10分待たされた挙句、公募要領を読み聞かせてくれるだけです。「それはわかっているけど、この場合はどうすれば良いのですか?」と突っ込んだら、「これ以上はこちらでは判断できません」の繰り返しになります。 疑問があれば、尋ねてくださいというの嘘なのか? 間違ったことを回答したら誰かに怒られるのが怖いのか? まったく無駄な時間になります。いったん電話を切って改めて電話して、話が通じる人が出てくれることを願うか、諦めてそのまま申請するしかなくなる状況です。

 

煩雑で大量な書類

公募申請する際は、事業再構築補助金の概略や説明書、公募要領、規則、そしてGビスIDやJグランツの扱い方などの説明書だけで何種類ものファイルをダウンロードしなければなりません。電子申請部分の無駄な繰り返しのページ数が非常に多い。たぶん平均的日本人の90%は全部読まないでしょう。

採択されれば、補助事業の手引きまではものづくり補助金と同種の書類です。それに加えて、交付申請にあたっての注意事項や、またJグランツの交付申請マニュアルがそれぞれ数十ページの大作があります。 当職は、まだ紙文化の人なので、印刷してマーカーを引きながら読まないと頭に入ってきません。紙資源の無駄ですね。 細かいところを比較チェックすると、同じことをバラバラに違う表現で記載していたり、一方には注意書きがあり、他方にはないなど、どれを読んでもスッキリしません。たぶん、それぞれの書類を役人、事務局、IT屋さんの立場の違う三者がバラバラに作成し、全体としての調整や、申請者視点での分かり易さを追求する思考がまったく無いようです。

 

更に採択者にダウンロードさせる関連書類のフォルダーは二種類あり、それぞれ20~30個くらいのファイルがざっくりと格納されています。大量の書類を読み込んでいけば、どんな状況の時にどのファイルを使うのかがわかるのでしょうが、たぶん平均的日本人の99%はこの時点で心が折れるでしょう。中には、事務局が申請者へ発行する書類も混じっています。 せっかく電子申請システムを使うのであれば、それぞれの帳票もシステムに入れ、その入力プロセスがないと先に進めないようすれば良いだけではないでしょうか? また、公募要領や関連書類ファイルはたまに変更され、変更に気づかず提出すると、新しいフォーマットで再提出を求められます。勘弁して欲しい。

 

中小企業庁の役人さん、もっとプロ意識を持って欲しい。

 

交付申請

見積書を収集して交付申請すること自体はものづくり補助金と同じです。

しかし、ここで上記公募申請時のデータをExcelにダウンロードしたファイルを使うことになるとは直感的にわかりにくいです。 結論は、見積書または価格の妥当性を示す資料をベースにして、このExcelファイル内の補助事業経費シートの金額を修正し、そのファイル名のままアップロードしろとのこと。 全部で100ページ分くらいあるマニュアルに、この肝心なことは書かれていません。

交付申請をした翌日、そのことに気づいてもいったん申請したものは差し戻しされないと修正ができない仕組みのようです。仕方がないので、差し戻しをしてくださいと言っても、申請者本人からの依頼でないとできませんとのこと。 今まで、代理人として話してきて、素性もすべて話し、もう一時間以上経っていました。行政書士法に基づき、民法の定めの代理ですよと主張しても、「この補助金のルールは違います」とのこと。 どこの国の行政機関なのかと疑いました。「オラの村では青信号は一旦停止」と言っているようなことです。

申請者へ電話して事情を説明し、コールセンターへ電話し差し戻しを要求しても、また一からの説明が必要で、更に一時間かかったようです。

 こんな実情の中で、事業者が補助事業に取り組み、来年になって報告、そして給付の段階になると、どんな事務局とのトラブル、煩雑なことが出てくるか、考えただけでぞっとします。

 

 

愚痴ですが

政治家やお役人に今一度考えていただきたいことは、不正を許さないことが第一ではなく、経済施策としての効果の最大化が重要であることです。事業再構築はまだ第一回公募の採択者が補助事業に取り組んでいる状況ですが、他の補助金や給付金・支援金の例では、それぞれの事務局の不当な要求などの行為により、モチベーションが下がり途中で諦めたり、給付された時には怒りや恨みしか残らないような状況が、不正事件の何百倍、何千倍、いや一万倍以上も起きていることに気づいて欲しいものです。 1兆円の予算でも実際の経済効果は半減しているのかも知れません。 そうではなく、1兆円の予算によって、今後10年間で100兆円の経済効果が生まれるよう事業者を育て、支援することが責務ではないでしょうか?

 

そういえば、事業再構築補助金の採択後のマニュアルの説明やシステムは、まず「申請取消」から始まっているようです。 一時支援金・月次支援金も不備理由が来ると「申請却下」ボタンが押しやすい配置になっていることと同様に、実務者のセンスの悪さを感じます。 もっと言うと、GビズIDのコールセンターは0570の有料ナビダイヤルのみ。 問い合わせが来て欲しくないのでしょうね。

新総理になって、追加の経済政策を国債によって打ち出すようですが、政府がアクセルを踏み込んでも、行政の末端ではブレーキを踏む続けている人が多数いるようです。

 

最後に良い事もひとつあります。

コールセンターは十分な人数を配置しているのか、電話は一発で通じることが良い事です。 去年の持続化補助金や持続化給付金は酷かったことと比べると雲泥の差です。

 

令和5年7月 追記

交付申請でとんでもない事案が発生しておりました。詳しくはこちらのブログ記事です。 交付申請後5か月間も放置され、やっと6か月目に修正依頼が来て対応したら、事務局担当者が突然退社(仕事が嫌になったのかも>)して、新たな担当者から次々と修正依頼が1ヶ月続き、それも対応した後、更に1か月後に、「3枚の業者選定理由書が不許可」により形だけの相見積の要求です。この書類だけ7か月も経ってから審査したのか? もう交付申請から8か月が過ぎ、補助事業期間の残りは5か月を切っています。とんでもない事務局(㈱パソナとその2次・3次下請け)だと思います。そして、その責任は経産省中小企業庁にあります。

 

一方、当職が事業計画書作成の支援を行った事業者ではありませんが、交付申請後のサポートを依頼されたことがあります。 その場合、なぜ認定経営革新支援機関が助言しないかを尋ねると、ココナラ(ネット上でのやりとりのみ、直接コンタクト不可のサービス)で認定経営革新支援機関に確認書発行してもらったとの事。そんなことができるのか疑問です。ココナラを調べると、数人のビジネスコンサルが、認定経営革新支援機関として数万円で確認書を発行しており、受注件数はかなりあります。 認定経営革新支援機関は事業者と一緒になって事業計画を作成し、補助事業を数年に亘ってサポートすることが業務です。 ココナラというシステムではその業務は完遂できないことが明らかです。

 

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コメント: 1
  • #1

    stms (月曜日, 04 10月 2021 00:48)

    こんにちは!第二回目で採択された経営者のものです。共感しかありません!(笑)本当にどうかしちゃってるなと思うことばかりで、私達は自分達で全ての手続きを行なっていますが、代理で申請してる方々は更に苦労されてるだろうなと思います。。
    あまりにもひどすぎて文章にするのも悲しくなりますが、自分の代わりにこうしてまとめてくださる方がいて救われました。ありがとうございます。多くの人にこの事実を知って欲しいですよね。(特に国の偉い人...。)
    私もこれから交付申請頑張ります!