自由競争が重視される現代社会において、長年、行政の規制緩和が求められてきましたが、まだまだ様々な業種で許認可が必要とされています。個々の許認可は、根拠法令によって規定されています。多くの場合、許認可を得ないまま営業すると刑事罰(懲役、罰金)や行政罰(過料)が科せられてしまいます。
そして、その許認可を行う地方自治体の長、保健所、消防署、警察署(公安委員会)、税務署などの行政機関は、人的、物的、または金銭的な要件を満たした申請でなければ許認可が出せない仕組みになっています。 しかし、その許可要件を理解し、平日しか開いていない行政機関に出向き、様々な書類を集めたり作成したりと煩わしいことが多々あります。
許認可申請の代理業は行政書士の主要業務ですが、できるものであればご自身でやってみようと考える方が多いと思います。 そこで、出し惜しみなくご自身で申請する際の要領や注意点を無料でこっそりお教えします。
許認可によっては各行政機関によって行政裁量の幅や、提出書類の違いがありますので、わかりにくいことは現場の行政機関の担当者に問い合わます。
保健所による飲食店営業許可の「飲食店営業」は食品を調理し、または設備を設けてお客さまに飲食させる営業を指し、「喫茶店営業」を除き、居酒屋など酒食を提供する場合を含みます。「喫茶店営業」は、酒類以外の飲み物と茶菓をお客さまに飲食させる営業。喫茶店でパスタなど調理が必要な場合は「飲食店営業許可」が必要になります。
また、真夜中の午前0時から日出時までに酒類提供を伴い営業する飲食店は、別途、警察署生活安全課に「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。
「風俗営業」と聞くと、性風俗店を思い浮かべる人が多いと思いますが、「性風俗特殊営業」と「風俗営業」は別ものです。「風俗営業」を行うには都道府県公安委員会の許可が必要で、「性風俗特殊営業」は不思議なことですが届出だけ済みます。
各都道府県の条例や公安委員会告示などにより営業が制限される地域は注意して申請する必要があり、飲食系の風俗営業許可の場合は上記の保健所による「飲食店営業許可」を先に取得してから風俗営業許可申請が必要です。
建設業は元請、下請にかかわらず、建設工事の完成を請け負う業種です。建設業許可業者は全国で約46万者と非常に数が多く、年間約2万者が新規申請し、ほぼ同数の約2万者が廃業しているのが近年の状況です。
建設業許可は元請として2種類の総合的な一式工事と27種類の専門工事、合計29種類に細かく分類されています。その区分によって申請先や提出書類が変わってくる許認可です。
地方行政機関(市町村)が収集・処分する一般廃棄物(家庭ごみ)とは別で、産業廃棄物は事業活動によって発生する廃棄物で、「あらゆる事業活動に伴う」20種類に分類され、その内、「特定の事業活動に伴う」7種類があります。
また、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境にかかわる被害を生ずるおそれのあるものを特別管理産業廃棄物として区分しています。
事業者はその事業活動に伴って生じた産業廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないため、必要な許可を得ておく必要があります。全国の産業廃棄物処理業者数は約12万者。廃棄物の潜在的性質として、生活環境保全上の支障をきたすおそれがあるから、一定の知識、技能、施設、機材、資力を有する人・企業だけに廃棄物の処理を許可しています。
「古物」とは、一度使用された物品若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものです。 古物の売買を事業で行う場合や、インターネットやネットオークションで継続的に中古品を取り扱う場合は、古物営業許可が必要になります。
古物は窃盗や強盗といった犯罪によって取得された物品が混じるおそれがあり、古物売買が自由に行われると犯罪を助長することに繋がるため許可制となっています。全国で毎年70万者以上もの申請があり、インターネットでの古物売買が増えています。
酒類の製造・販売には酒類販売業免許が必要です。酒税法には目的条文がありませんが、国税収入としての酒税の確保と、酒類製造・卸売から販売の業界の安定を図ることだと解釈されています。また、未成年者飲酒禁止法による20歳未満の者の飲酒防止や、消費者利益のために酒類販売の公正な取引の確保という目的もあるようです。
全国の種類販売業免許業者は約9万者で、一般酒販店が4万者、コンビニが3万者、ドラッグストアなどその他が2万者。
倉庫業法第1条「倉庫業の適正な運営を確保し倉庫の利用者の利益を保護すると共に倉庫証券の円滑な流通を確保すること」を目的とする倉庫業許可は、国土交通大臣による登録制で、主たる営業所所在地を管轄する運輸支局が登録申請の窓口です。
8種類の倉庫の種類があり、それぞれの基準が定められおり、申請には多岐にわたる提出書類が求められます。近年、一般消費者の家財を寄託するトランクルームが増加しており、消費者保護のために、一定の基準を満たすと国土交通大臣が認定する「認定トランクルーム」という制度もあります。
国土の3分の2が森林であり1億人を超える人口を抱える日本は、居住、商業地、工業地そして農地を計画的に合理的な国土の利用を求められます。
その中で、食糧生産の基盤である農地は食糧確保の観点からむやみに減少させることができないため、農地転用は許可または届出が必要になります。
「農地の権利移動許可」(農地法第3条)、「農地の転用許可」(農地法第4条)、「農地の権利移動許可&転用許可」(農地法第5条)に分かれ、農地の面積や所在地などにより都道府県知事の許可、農林水産大臣の許可、または市町村の農業委員会への届出が必要になります。