中小企業診断士とは?

中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対し診断・助言を行う専門家で、平たく言って「ビジネスコンサルタント」という意味です。

法律上の国家資格として、「中小企業支援法」に中小企業診断士制度が規定されており、その第11条に基づいて、経済産業大臣が登録しますので、「ビジネスコンサルタント唯一の国家資格」とも呼ばれ、「ビジネスパーソンが新たに取得したい資格の第一位」だそうです。

 


中小企業診断士制度と試験

中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断や経営に関する助言を受けるにあたり、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録する制度なのですが、この能力を備えることは容易ではありません。 毎年8月に行われる一次試験(経済、財務・会計、企業経営、運用管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策の7科目で全てマークシートの2日間の試験)で、60%以上の得点が必要。 平均60%で一発合格する方もおられますが、科目合格(平均点が60%未満)して翌年残り科目の合格を目指す方の方が多いようです。この科目合格は2年間有効なので、3年間で7科目を合格しないと、また一度科目合格した科目を受験しなければならず、永遠に合格しないのではないかと不安になります。合格率は各科目20%~30%程度。

 

1次試験を合格しても、次は10月の2次試験(筆記)があり、4つの事例(一事例80分の4本勝負)で、全問筆記の試験です。 これがとんでもなく難しいというか、当初は学習方法が全くわかりません。過去問をやっても、模範解答がないので正解がわかりません。この内容については、各事例の考察などブログに書いていますので、今後受験される方は参考にしてください。合格率は約25%なので、1次試験合格者の4人に1人しか合格しません。1次試験合格の有効期限は当年と翌年だけなので、2次試験を2回不合格だと、また1次試験から始めないといけません。もう投げ出したくなりますね。

 

やっと2次試験(筆記)に合格してもまだ終わりません。12月の2次試験(口述)、即ち面接のようなものを受験しなければなりませんが、この合格率は約100%なので、不合格にはなりません。

 

2次試験(口述)の合格通知と合格証は年明けに届きます。これで中小企業診断士になれたのかというと、そうではありません。 登録するには、合格日から3年以内に、合格証の原本(原本を取られてしまいちょっと悲しいです)と実務要件(合格日以降で15日以上の実務従事か実務補習)が必要です。 もうここまでくると面倒くさいを超えて、意地になってしまいます。 このあたりの面倒くささもブログに書いています。

 

中小企業診断士の業務

中小企業診断士の業務は、中小企業支援法で「経営の診断及び経営に関する助言」とされています。「現状分析を踏まえた企業の成長戦略のアドバイス」が主な業務だそうです。「診断」と「助言」とはふわっとした表現で、その結果、当該企業がどうなるのか、どこまで責任、義務があるのか釈然としません。 

 

具体的には、過去の財務諸表ベースの財務分析(成長性、収益性、安全性、効率性)、経営方針や経営戦略・事業戦略に対する評価、SWOT分析やVRIO分析などを行い事業領域の確認や変更の助言、成長戦略や競争戦略への助言、マーケティング戦略の助言、組織変更や人的資源管理の助言、IT導入やインターネット活用の助言など、助言だらけです。 これらを20~30ページのレポートとして纏め、納品するのでしょう。 私の場合は、法務リスクの助言や具体的な契約書作成も行い、融資か補助金獲得のために、公募要領を読み込み適合するように事業計画として纏めるのでその申請書が納品物となり、融資実行や補助金が採択されることを成果としています。

 

中小企業診断士の役割

中小企業診断士の役割は、個々の中小企業の成長、生産性の向上、それに伴う雇用の拡大によって、日本経済への貢献でしょう。日本の事業者数、約380万者の内、約379万者が中小企業です。 それに対して、中小企業診断士の数は3万人弱で、毎年1千人くらい増えているそうです。行政書士の人数(約5万人)と比べると少ない(行政書士が多過ぎる?)ですね。

 

中小企業診断士の資格がなくても、ある業種や職種に特化したベテランのビジネスコンサルタントはうじゃうじゃいるでしょう。 行政書士、社労士、税理士のような排他独占業務がないということが、中小企業診断士という資格を色あせて見えてしまいます。 客観的に考えてみても、あの一次試験、二次試験を60%ちょっとで合格した人が、毎日そればっかり考えて、苦労している事業者に対して、何の診断、助言ができるのか疑問に陥いることが多いでしょう。 〇〇大学経営学部を卒業しました新卒社会人程度の能力、評価になるのでしょう。

 

一方、あの一次試験と二次試験を通過した人には、一定の幅広い知識を吸収した慣れと、国の経済政策や金融の関係者との共通言語(共通定義)が備わると言えるでしょう。それは補助金や融資の申請書類が、審査側にとって読み易くする効果が出ると考えられます。 中小企業と行政・金融機関とのインターフェイス、潤滑剤の役割とも言えると思います。

 

私は、学者になりたい訳ではなく、本を書いたり講演したりする考えはありません。 困っている・悩んでいる事業者さんに寄り添い、信頼関係を築き、楽しく・しっかり・時には厳しく、自分の知識と経験をフル活用することに集中していきたいと考えています。