中小企業診断士になりました

面倒くさい試験を3年がかりで突破し、令和3年4月、やっと中小企業診断士に登録されました。4月22日官報(第479号)に経済産業省告示第百号として、中小企業支援法の第11条第1項の規定に基づき登録ということです。

この月は約150名の名前が掲載されており、その最後の方に登録番号421197で自分の名前があってほっとしたものです。

しかし、官報を印刷し、妻に見せても、ほとんど反応がありません。勉強していたことを知っているし、いろいろ協力してくれたのですが、「中小企業診断士って何?」「何が変わるのか?」の疑問に対し、私がうまく説明できないからでしょう。 

 

中小企業診断士って何?

国の経済政策の中の大きなテーマの一つが、中小企業の支援です。これは、「日本経済を下支えする中小企業の活力を生み出す」「中小企業の生産性の向上が日本経済の成長に繋がる」「欧米諸国に比べベンチャー企業が育ちにくい社会経済環境を変革する」などの考え方が50年以上続いているのでしょう。

法律は、中小企業基本法、中小企業支援法、中小企業憲章、中小ものづくり高度化法、農商工等連携促進法、中小企業地域資源活用促進法、中小企業等経営強化法、産業競争力強化法、下請中小企業振興法、小規模企業振興基本法、小規模事業者支援法など、いっぱいありますが、どれがどのように効果があったのかわかりません。過去50年以上もかけて、国会議員の方々が練りに練ってきた結果(残骸)のような感じです。

その中の、中小企業支援法の目的は、第一条に「この法律は、国、都道府県等及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業支援事業を計画的かつ効率的に推進するとともに、中小企業の経営の診断等の業務に従事する者の登録の制度及び中小企業の経営資源の確保を支援する事業に関する情報の提供等を行う者の認定の制度を設けること等により、中小企業の経営資源の確保を支援し、もつて中小企業の振興に寄与することを目的とする。」とされています。 要は、国(経済産業省 中小企業庁)、地方自治体、そして中小企業基盤整備機構という三者の行政機関が行う支援事業ということです。

また、同法の第11条には、(中小企業の経営診断の業務に従事する者の登録)として、「経済産業大臣は、中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言(以下単に「経営診断」という。)を受ける機会を確保するため、登録簿を備え、中小企業の経営診断の業務に従事する者であつて次の各号のいずれかに該当するものに関する事項を登録する。一 次条第一項の試験に合格し、かつ、経済産業省令で定める実務の経験その他の条件に適合する者 二 前号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者で、経済産業省令で定めるもの

2 前項の規定により登録すべき事項及びその登録の手続は、経済産業省令で定める。

うーん、結局、中小企業診断士とは、経営診断をしてくれる人で、試験に合格した者かその同等以上の能力を持つ者ということです。

一般に、中小企業診断士について、「ビジネスコンサルテーション唯一の国家資格」という表現を見ることがあります。 唯一の国家資格といっても、中小企業診断士でなければ企業の経営診断してはならないという法律はありません。 或る業界で長年経験を積んだベテランさんや、経理・人事・設計・製造・販売・ITシステム構築などの特定業務で実績を積んできたベテランのビジネスコンサルは数多く活躍されています。そして、驚くほど優れた方もいれば、残念な方もごっちゃまぜの状況だと思います。 中小企業診断士だからと言ってすべてが優れているとも思えません。 ただ、あの2次試験の勉強(過去10年分以上、50事例以上の研究)は、補助金の申請書作成には効果がある(要領が良くなる)ような気がします。

 

結局、中小企業診断士は、排他独占業務が無い、試験が面倒くさい、登録するのも面倒くさい国家資格ということです。

 

妻に説明しても、「ふーん」と1秒で終了。 

 

中小企業診断士になって、これから何をどうするか?

まず、新しい名刺を作ります。というか、それだけです。

「さくらい行政書士事務所」の屋号は、行政書士会に登録されており、税務署へ開業届を出しています。 この屋号を「さくらい行政書士&中小企業診断士事務所」とするのは、名前が長過ぎです。 行政書士法で「行政書士」という単語は入れないとだめなので、しばらくはこのままにします。 もしかして、来年くらいに行政書士法人か合同会社を設立する時に名称を変更するかも知れません。

私の考えでは、「行政書士&中小企業診断士」のペアリングは、ベストマッチな企業支援者だと思います。 商業登記はできないけれど、税務申告の代理はできないけど、労務関連の代理もできないなどと、できないことも多々ありますが、まず、様々な角度から対象企業を見ることができます。企業法務、節税(脱税ではありません)、労働関連も含めて、財務分析、経営方針、経営計画、事業計画、マーケテイング戦略、営業から海外展開、人的組織管理、知的財産管理、IT導入、経営者から従業員の個人的な民事法務、許認可申請や変更手続きなどと、かなり広範囲なサポート、アドバイス、代理申請が可能です。

 

逆に、行政書士でない支援者は、対象企業が官公署へ提出する書類の作成や代理行為をすることが行政書士法違反になることをご存じなのかと疑問を持ちます。

 

私は、経営診断だけを望んでいる中小企業経営者は皆無だと思っています。そもそも診断結果を見ても「ふーん」で終わりでしょう。 診断結果とそのアウトプットによって、収益が拡大する、新規客を獲得できる、新商品が開発できる・早まる、新市場を開拓できる、事業再構築や事業承継が要領良く早く進むなどに繋がることが重要でしょう。 

従って、数時間や数日だけのお付き合いをするつもりは全くありません。 相性は非常に大切ですし、一件当たりに費やす時間が長引き、自己の時間管理が既に難しくなってきています。

 

楽しみは、今まで全く知らなかった業界の情報・事情がわかり、経営者さんと同じ視線で同じ問題を考え、悩み、一緒に取り組み、一緒に喜んだりできることです。そして、A社さんとB社さんを、人と人を繋げることも面白いことです。こういう活動を2,3年続けると何かを掴める予感がしています。

 

今(令和3年6月)は、いっぱいたまった補助金申請の事業計画をつくることに集中します。先月、認定経営革新等支援機関の登録申請を行い、今月25日に承認される予定です。 これまた、「何をするの?」という妻の質問に対し、どう説明しょうか考え込んでしまいます。

 

備考

Twitterのフォロワーさんで、中小企業診断士バッジの写真を出している方が何人もいました。 あれって、どうやってもらうのかな? 千葉県中小企業診断士協会に入会しなければならないのかな? そもそも、あれを付ける必要性、付ける場面が思いつきません。 行政書士バッジは入管や警察署に入る時、心の支えになります。

 

それと、一か月前に中小企業診断士登録証という白くシンプルな身分証明書のようなカードが届きましたが、額に飾る表彰状のような紙がありません。試験の合格証書の原本は提出してしまったので手元にありません。 悲しいです。

 

2022年8月24日追記

本ブログを書いて1年以上、千葉県中小企業診断士協会に入会してちょうど1年が経ちました。

本ブログはコンスタントにアクセス数(週平均50くらい)があり、平均滞在時間も10分近くとちゃんと読んでもらっているようです。 これから診断士を目指す方が多いのかなって想像しています。

 

そのような方々へ、千葉県中小企業診断士協会について追記します。

 

申請は簡単です。申請書には他の診断士からの紹介欄がありますが、白紙(普通知り合いに診断士はいないでしょう)でも構わないようです。当職の場合は、履歴書のような自己紹介文を作って添付しました。入会費は3万円、年会費は4万3千円。これは各都道府県によって多少の差があるようです。また、複数の都道府県の中小企業診断士協会に所属することも可能です。

 

入会の特典は、

・各種研究会・研修会への参加: いろんな研究テーマがあり、活動状況に差異があるので選択が必要

・機関紙「アンフィニ」の配布: まあまあ参考になる情報です。

・中小企業診断士バッチの貸与: 貸与だから返さないといけません。

・会員向けメーリングリストによる各種情報共有(研修会、セミナー、受託事業の公募他):よくメールが来ます。

・実務従事事業受講料の会員割引: 5年毎の更新のために計画的に受講しないといけません。

 

千葉県の会員数は500人くらいだそうです。 千葉県行政書士会の会員数は2,000人なので、かなり少ない印象。 行政書士は行政書士会での登録必須ですが、診断士の場合は必須ではないし、資格取得後に企業内診断士のままの人も多いそうです。

 

千葉県の場合、会員同士のコミュニケーションは良いようです。毎年11月にゴルフ大会(レベル高いです)もあるし、今はコロナ禍ですが、各研究会などで飲み会なども頻繁に行われていたようです。登録一年目は新入会員研修会という企画があり、新入会員7名一組で、テーマを決めて、約半年間の研修を自主的に行い、年明けの1月に発表することになります。自分とは違うタイプやバックグランドを持つ診断士と出会うと刺激になります。

 

また、千葉県中小企業診断士協会として、商工会、金融機関、産業振興センターなどとの連携や受託事業もあり、いろんな募集があります。 たとえば千葉県商工会連合会から千葉県内の各商工会とオンラインで結び、連合会本部に毎日2名の診断士が詰めています。 当職も月に一回程度、千葉市の連合会本部でお手伝いしています。 普段、自宅で一人で仕事をしているので、たまに複数の方と机を並べると、ついついおしゃべりになってしまいます。

 

行政書士会は、会員数も多いのでしょうが、第三者機関との連携や募集などは、ほとんどありません。コロナ禍前は研修会が多かったし、各支部でも勉強会やコミュニケーションの場がありましたが、ここ2年ほどはまったくありません。 年会費の面からみると、診断士協会の方がコストパフォーマンスが良いように感じます。