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遺言を残す目的

遺言については日本公証人連合会のサイトにいろいろ詳しく書かれていますが、なかなか目を通す時間がありません。 そもそも自分の死後のことなので積極的に考えること自体が難しいですね。 実際、有効な遺言を残して亡くなる方は10人に1人程度ではないかという話を聞いたことがあります。

遺言の目的は「自分の死後に遺言の内容をすみやかに実現すること」ということですが、以下のような考えも持つことができるのではないでしょうか。

①「円満な我が家に遺言は必要ない」➡ そう思う方が大多数だと思いますが、ご自分が存在しない・口出しできない残された家族を想像してみましょう。もしほんの少しでも不安があれば、自分の分身(意志)を残すことが遺言となると思います。

②「遺言を残すほどの財産がない」➡ 法務省司法統計によると、家庭裁判所での遺産分割事件のうち約3割は相続財産1,000万円以下のもめ事、5,000万円以下のもめ事だと8割近い割合になります。遺言は決して何億円も資産のあるお金持ちだけの話ではないんですね。

③「遺言は縁起が悪い」➡ 確かに日本人の心情としては「縁起が悪い」ことの一つです。アンケート結果があるわけではありませんが、会社定年時や区切りの年齢に達したときに遺言を残した方々の生の声として、財産を残すために法律を学んだり、財産を整理したり、生前贈与を検討したり、人生を振り返ったり、また家族のことを考える時間を持つことによって「爽快感」や「達成感」を感じる方が多いそうです。 遺言書には財産分与の内容だけでなく家族への想い、願いや感謝の言葉なども残すことができますね。

④「遺言を残したら財産が使えなくなる・処分できなくなる」➡ 遺言は被相続人の単独行為であり、遺言は死後に効力が発生します。 遺言の内容に抵触する生前の処分行為などは遺言を撤回したものとみなされます。 また遺言が複数あっても日付が古いものは無効なので、何度でも書き直すことができるのであまり気にする必要はないと思います。

⑤「遺言内容が実現されるか不安」➡ 確かに実現されるかどうか見届けることはできません。 遺言の中で信頼できる第三者(相続人以外)を遺言執行者として指名したり、特定の相続人には負担付遺言にしたり、または遺言信託の方法もあります。

遺言の残し方については民法に規定があり、このホームページでも簡単に説明しておりますが、自筆証書遺言の場合、「日付、表書きから内容まですべて手書き」ということがネックだったと思われます。 相続争いが起こり、筆跡鑑定をするケースもあります。 ところが、つい最近の法令改正によってパソコンで作った財産目録や銀行口座の手帳コピーなどを添付することも可能なり、随分簡単に作れるようになったと思います。 ただし、自筆証書遺言の場合は残された相続人に見つけてもらわなければ意味がないので、保管場所に注意が必要です。

ここまで書いて、私自身もまだ遺言書を作っていません。 結婚30年になる妻からは、「郵便物を見ていると、あちこち口座があるみたいだけど、どこに何があるのか整理して、不要な口座は閉鎖してくださいね」とプレッシャーをかけられています。 もう少し優しく言ってもらいたいものです。