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相続相談に関する考察

インターネット、新聞・雑誌などで遺産相続に関する情報が氾濫し、ますます増えているように感じます。 地方自治体を中心とした相談窓口、弁護士・会計士・司法書士・行政書士、そして金融機関など、様々な業種、団体または法人が相続に関する情報を発信し、「無償」相談を行っています。 そして、どこも相談者が増えてきているのが現状です。

日本の年間死亡者数(0歳児から100歳以上の高齢者すべて)は約140万人で、その数だけ相続が発生していることになります。その中で、家庭裁判所へ持ち込まれた相談件数は年々増えており年間20万件弱。訴訟になってしまうのが年間1.5万件程(この数字は顕著には増えていない様子)。「裁判所」となるとなかなか足を運ぶ機会はありませんが、20万件の個々の相談に関係する相続人数の総数は100万人程度になるでしょう。 わざわざ家庭裁判所に相談や調停を依頼するということは、その前に様々な人に相談を持ち掛け、いろんな意見を収集する人も多いでしょう。 同じ年代の方との飲み会や同窓会などでは必ず病気の話か、又は相続の話になってしまう訳です。ということは、相談したいがまだ誰にも相談していない人を含めると数100万人の規模の人が相続に関する相談事を抱えていることになります。 

因みに、相続税を納める件数は10万件程度なので、相続件数である140万件の8%(相続税の対象は遺産が3000万円+600万円X法定相続人数を超える場合なので、亡くなった方に配偶者と子供2人だと、4800万円以上の遺産があれば相続税を納める対象となります)なので、遺産相続の過多が相続相談のすべてではないでしょう。

 

具体的な相談内容としては

・遺産がどれほどあるのかわからない
・銀行口座が凍結されてしまって引き出せない
・生まれてから死亡までの戸籍の収集や遺産分割協議書の作成が大変
・相続人同士の不和や行方不明
・長年、介護や看病をしてきたのに遺産がない(少ない)
・不動産(自宅、農地、山林)の処分や活用
・債権(貸付など)や債務(借金)などの対応
・遺産より債務(借金)の方が多いかもしれない➡相続放棄には期限がありますので、すぐに家庭裁判所へ相談してください。
・生前贈与の取り扱い
・遺言に家族(相続人)以外の人への遺贈
・遺産分割協議の際に配偶者控除や小規模宅地等の特例を考慮したいが…

など、さまざまなケースがあります。

 

相談する相手を考えてみると、それぞれの立場や対象が見えてきます。 たとえば、

・弁護士
➡争いごとになりそう、既に収拾がつかない状況の案件は弁護士、又は家庭裁判所へ相談するしかありません。たぶん年間数万件レベルが対象

・公認会計士
➡相続税を納める対象だと分かっていれば、最初から公認会計士に相談する方が良いでしょう。 相続税対象に年間10万件が対象

・司法書士
➡不動産の所有権移転登記までの相続手続き、アドバイスをしてくれます。ただし、移転登記だけであれば必要書類を揃えれば法務局で手続きが可能です。

・金融機関
➡遺産分割協議成立後に、その金融資産を相続する新規顧客へのサービスに力点を置くので、さまざまなケースの相談相手にはならないでしょう。

 

こう考えてみると、行政書士に相談してみようと思いつく割合はどれくらいでしょうか? 日本国民の9割以上は行政書士が相続について相談する相手だと思いつかないのではないでしょうか? 行政書士は争うごとや調停には関与できません。税務申告もできないし、不動産登記もできません。しかし、全国の地方自治体、公共施設、スーパーなどでの無料相談には多くの行政書士がお手伝いをしています。

そもそもほとんどの(もめない)相続手続きは相続人自身が手続き可能ですから、ご自身で手続きができるかどうかの見極めや、何に注意して進めれば良いかの確も認のために行政書士に相談するということが自然に広がってもらいたいものです。私も電話でご相談を受けてアドバイスをするだけのケースが多く、かなりの割合で最初のアドバイスだけで解決の道が見えてきます。もちろんこのような相談は無償で対応させていただいています。多少相続業務を勉強した知識があるので、小さな社会貢献になればと思います。