令和1年 中小企業診断士2次試験 事例Ⅲの考察

事例Ⅲは、1次試験の企業経営論と製造業の運営管理の知識を使う問題です。大手電機メーカーに長年勤めていたので、比較的得意というか、他の事例よりも取り組みやすいと思っていましたが、今年の問題は経験が邪魔をして素直に解答できたのか分かりません。

 

(1)事例Ⅲ概要:輸送機械、産業機械、建設機械などに用いる金属部品製造業向け、金属熱処理と機械加工のメーカー。従業員40名、年商5億円。当初は金属部品の熱処理を専業としていたが、現在は熱処理の前工程である部品の機械加工も請け負っている。機械加工は多品種少量の受注生産であるが、徐々に受注量が増加している。 金属熱処理受注の20%を占める自動車部品メーカーX社から、量産型の機械加工から熱処理加工の受託生産の依頼があり、C社は積極的に検討を始め、また後工程引き取り方式の要請もある。工場新設と設備増強、生産体制および生産管理の強化が必要になるため、将来を見据えた戦略的な投資と社内体制の構築が必要という状況。

 (2)第1問:「C社の事業変遷を理解した上で、C社の強みを80字以内で述べよ。」
機械加工の設計から加工、そして金属熱処理加工の設備、ノウハウとその一貫体制が強みとしたが、どちらの加工も作業者の個人技能に依存しており、弱みも一緒に問題にしてほしいと感じた。多品種少量生産の機械加工はたった2人の設計者ということと、生産設備は汎用の旋盤、フライス盤、研削盤がそれぞれ複数台と記述されており、アンバランスな印象を持った。売上が伸びていると言っても、5億円の2割か3割程度だと推測すると、複数台というのが2台ずつかも知れないが、3台以上ずつあれば既に設備過剰ではないかと無駄な憶測を持ってしまった。

 (3)第2問:「自動車部品メーカーX社からの機械加工の受託生産に応じる場合、C社における生産面での効果とリスクを100字以内で述べよ。」
生産面の効果は、生産効率の向上、材料調達量増加によるコストメリットをまず思い浮かべた。リスクは100字で書ききれないほど思い浮かび、何を書いたのかさっぱり忘れてしまいました。初めての量産型生産、外注かんばん方式の対応、X社の受注依存度が上がる事などを書いた筈です。

 (4)第3問、設問1:「X社から求められている新規受託生産の実現に向けたC社の対応について、C社社長の新工場計画についての方針に基づいて、生産性を高める量産加工のための新工場の在り方について120字以内で述べよ。」
新工場の在り方とは漠然とした問いです。機械加工の生産量が2倍に増えることにより、従来の個人技能依存を止め、標準作業化そして暗黙知を形式知化し、トレーニングやOJTにより多能工化を図ること、2つの加工(別建屋)間の移動・一時在庫の管理することのようなことを書いた筈です。大原の模範解答を見ると、セル生産方式書いており驚いた。前工程の機械加工は設備毎のロット生産であり、建屋を移動させた後、時間のかかる蒸し暑い熱処理が後工程になるので、何をセル生産にするのか訳がわかりません。そもそも運営管理の理論はセル生産や多能工がお好きな学者さんが多そうで、現実感の匂いの無い解答が出てくる傾向があると思う。

 (5)第3問、設問2:「X社とC社間で外注かんばんを使った後工程引取方式の構築と運用を進めるために、これまで受注ロット生産体制であったC社では生産管理上どのような検討が必要なのか、140字以内で述べよ。」
受注生産の月次計画(2つの加工は独立)から、三か月先の内示とローリングフォーキャストベースに変わり、納品3日前の外注かんばん方式の要請を読んだ瞬間、このC社は部品在庫、機械加工在庫、熱処理後の製品在庫と在庫の山、または欠品に悩まされると感じた。解答としては、二つの加工の生産統制を実施し、今までの加工毎の月次生産計画から、3か月L/Tと3日前確定による週次・日次の短期生産計画を徹底する、部品調達を短くするなどとなる筈です。ある程度時間がかかる温度調整が必要な熱処理が入っていたら、無理なことが多いでしょう。一般に、自動車メーカー向けTier2やTier3メーカーは在庫対応するしかないのが現実。 生産統制や生産計画の調整は、Tier1メーカー及び自動車メーカーの生産計画の調整の情報を如何に早くとらえ腹をくくるしかない。そのプル数量が上がったり下がったりすることを、毎月、毎週Watchしながら、果てしない生産調整を続けていくしかない。

 (6)第4問:「新工場が稼働した後のC社の戦略について、120字以内で述べよ。」
X社向け受注実績をアピールし、機械加工から熱処理加工の一貫体制による差別化集中戦略を採り、既存客から機械加工の受注と、新規顧客開拓、または自動車以外の新市場開拓による成長戦略を書いた筈です。今、読み返して営業部門が無かったことに気づきました。これは営業部門を新設しという一文を入れるべきでした。(過去問にも同じパターンあり) 

この事例Ⅲも自分が何を書いたのか覚えていないので何パーセント取れたのか、さっぱりわかりません。ストーリーは理解でき、出題者の意図は推察できても、何の単語を当てはめたのか、文章の完成度がどうだったのかが心配です。

 

僕がC社社長に相談された場合を考えると、なぜX社は内外作見直しをするのか、当該10種類の部品のX社の過去の生産実績を調べたいものです。C社の財務状況がわかりませんが、X社に2千万円程度の資本を入れてもらえないか、少なくとも新工場の建設費や新規設備費の融資を好条件で取ろう、又は補助金を取ろうとアドバイスするでしょう。新規顧客開拓の目途が付いてから決断する方向もあります。(大企業の本社幹部ではないのだから、新工場建設の方針の中で述べて、新規顧客開拓は後から頑張ろうではリスクが高いと感じます) そして10種類の部品の設計や品質レベルはX社からの承認だけでなく、自動車メーカーの承認を取らないと危ないです。量産品でも設計変更は起こり得るので、一度機械加工を始めてしまうとC社負担の大量産業廃棄物になってしまいます。預かった金属部品を要求通りの仕様で熱処理するだけなのと、材料を購入し機械加工から受注するのは全く違う製造業です。 なんか、このC社さん、大丈夫かなって心配になってきました。