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知的財産管理③ 実用新案法

さくらい行政書士事務所 実用新案法

知的財産管理シリーズの3番目は実用新案法です。一般に特許ほど実用新案という名称は知られていないと思います。実用新案法は、物品の形状、構造または組み合わせに関わる考案の保護および利用をあかることにより、その考案を奨励し、これにより産業の発達に寄与することを目的としています。特許法と非常に似ています。

特許と違う点は、①特許と比べて高度性は求められていない考案(アイデア)、②特許は物の発明と方法の発明がありますが、実用新案にが方法は対象外で、物だけです。③実用新案権の存続期間は、出願日から10年と特許20年の半分です。(昔は6年ともっと短かった)

しかし、実用新案が登録されれば、その考案による物の製造・使用・譲渡等を独占排他的に行うことができる特許権同様の強い権利が生まれます。

 

実用新案権の要件

(1)実用新案法上の考案であることとして、①自然法則を利用していること(特許と同じ)、②技術的思想であること(これも特許と同じ)、③創作性があること(これまた特許と同じ)、そして特許と違うことは高度性が要件になっていません。

(2)実用新案登録の3要件、①産業上の利用可能性、②新規性、③進歩性と特許とまったく同じ表現ですが、特許に比べてハードル低くなります。

(3)不登録事由に該当しないことや先願であることも特許と同じです。

 特許法と比べるとわかりますが、要件の表現はほとんど同じです。そもそも、不思議なことに実用新案には実体審査がありません。 申請手数料が払われているか、申請書類が整っているかなどの方式審査が通れば登録されます。

 

実用新案の登録手続

特許法と比べると非常にシンプルで、「無審査主義」と呼ばれます。

①特許庁に出願するときは、手数料だけでなく3年分の登録料を一括して支払います。

➁願書は、申請書、明細書、請求の範囲、要約書、そして図面が必須になります。物の考案だけなので、図面が必ず添付するわけです。

③願書を提出して補正命令が出た場合は補正書を1か月以内に提出、補正命令がなければ、そのまま方式審査、出願から4,5か月で登録されます。

実体審査がなければ、実用新案の要件を満たしていない登録が多数存在することになり、後に紛争になったとき無効審判によって無効とされる可能性が高くなります。

 

実用新案はなぜ無審査主義なのか?

簡単にいうとスピードアップしてどんどん登録させる考えだからです。 難しくいうと、

①技術革新が加速度的に進んでいる今、発明と比較して、一つの考案が登録されても、それを上回る考案がすぐに出てくる、どんどんださせようという意思です。

➁高度性が低い考案は実施が容易で、考案登録後すぐに製品化されるので、権利の保護も早期に行う必要がある。

 

実用新案技術評価制度

無審査で登録される実用新案なので、登録要件を満たさないのに独占排他的権利を行使することにより、第三者が不当な損害を被るおそれがあります。従って、実用新案権者、またはその専用実施権者は、「実用試案技術評価書」を提示した後でなければ、自己の権利の侵害者等に対して差止請求や損害賠償請求のような権利を行使することができない制度になっています。

「実用試案技術評価書」とは、特許庁が発行する、実用新案権の要件に足りているかどうかの有効性の判断です。要は、考案のレベル評価がされることで、レベルが低ければ、権利行使をしても、相手方から無効審判に持ち込まれたら負けてしまうかも知れないというわけです。

 

そんな曖昧な実用新案をなぜ費用をかけて登録するかというと、①知的財産を意識して経営していることを、競合他社、行政機関や金融機関に対して示すことができる。②研究してきたが、特許を取るほどの自信はないが実用新案で権利保護を確定させようとする。③実用試案権から特許への変更は比較的可能だからまずは実用新案で登録する、などの考えがあります。

中小企業の皆さんにとって、さまざまな国や関係機関かたの支援や補助を受けるとき、実用新案権や商標権を取得していると経営計画を作るとき、補助金申請審査を受けるときにちょっぴり、場合によっては大いに有利になります。