令和2年(2020年) 中小企業診断士2次試験 事例Ⅲの考察

令和2年 中小企業診断士2次試験 事例Ⅲ

事例Ⅲは生産管理が主題です。電機メーカーにいたからには落としたくない事例です。モノづくりの現場にいた経験はありませんが、OEMビジネスを長く経験したので、マーケティング・商品計画・事業計画だけでなく、営業・受注活動、仕様変更から製造・検査・品質管理、毎月・毎週の生産計画・調整、物流、販売促進からカスタマーサービスまで幅広いオペレーションを経験しました。

だからといって、この2次試験は難解です。まず設問文を読み、知識の引き出しを開けといて、与件文を舐めるように読み、出題者の気持ちになって全体像を掴んだ上で、各設問の解答を考えねばなりません。

 

C社の概要

1955年創業、資本金4,000万円、従業員30名(内営業5名)のビル建築用金属製品とモニュメント製品などのステンレス製品の生産・据付の企業。どちらの製品も個別受注生産。事例Ⅲにしては図やグラフがなく、延々と文字ばかりが続き、二製品の相違が何度も出てくる流れで、最大の課題は納期遅延。納期遅延の原因になるキーワードがあちこちに散らばっているので、どのキーワードを使うのか、文章構成に戸惑いました。

業務プロセスは、たった5名の営業が、受注、設計、据付工事管理まで行うというスーパーサラリーマン。今気づいたのは、設計に2次元CADを使っているので、3次元CAD【今時2次元CADって残っているのかな?】というのもキーワードになったかも知れません。要は、設計のすり合わせに時間がかかり制作期間が短くなることが納期遅延の原因。 業務プロセスをどう見直してIT化するかを考えさせる感じ。

生産の現状には、納期遅延の原因が多過ぎです。①手作業をする4班の技術力の差があること、②二製品の技術の違い、検査の違い。 特にモニュメント製品はデザイナー立ち合いで手直しが生じる場合があり、ややこしそう、③生産計画は月次(毎度のパターン)、工程も工数見積も標準化していない(毎度のパターン)、④工場の作業スペース確保も難しい、⑤作業者は不稼働や打合せで不在は多いと、問題だらけの現場。 出題者は意図して問題のてんこ盛りをした印象です。

よそ者の中小企業診断士に相談する前にわかっていることだらけではないかと感じました。生産でも営業でも現場の人間が誰よりも問題を認識していることが多く、それを改善できない原因【ほとんどはカネです】を考えて解決アイデアを出し、実行させることが肝要だと思います。しかし、80分の試験では上辺だけで優等生的解答をしなければなりません。

 

第1問

C社の強みと弱みを各40字以内:40文字に収める文章力だけの問題ですね。 弱みが、第2問の問題点と被らないようにしたくらいです。

 

第2問

設問1は営業部門の問題点と対応策:問題点は、営業が受注から施工管理まで担当し、制作前の設計プロセスで顧客とのやりとりが多過ぎて時間がかかること。対応策は、営業に設計者を入れ(毎度のパターン)、CADを活用し生産とのコミュニケーションを良くすることと毎度のパターンの解答になったと覚えている。 やっぱりモニュメントの方は3次元CADを取り入れ造形物のイメージすり合わせの時間を短縮することをいれるべきだったと思う。

設問2は製造部門の問題点と対応策:問題点は、チーム力の差、月次生産計画、標準化ができていないこと、不在が多いこと。対応策は、マイスター教育、週次・日次見直し、標準化を行う、営業と製造のコミュニケーションを良くして打合せを減らすなど。 チーム競争、表彰、モチベーション向上という毎度のパターンも入れたかな? もう忘れてしまいましたが、そんなに文字数がないので書き切れなかったでしょう。

 

第3問

納期遅延対策としてのIT化に関する助言:これはコンカレントエンジニアリング導入で良いと信じています。CADデータを蓄積・活用し、設計から制作までシュミレーションによって設計上の不具合、ミス、打合せを減らす、設計すり合わせ時間の短縮という感じ。ちょっと簡単過ぎたかも?何か抜けた? デザイン性が高い個別受注品なのでMCなどを解答に入れると大外れになる気がしたけど、ある程度自動化し、手作業部分に集中させるという方法もあったかも知れません。しかし、数年かけて段階的にIT化し機械操作に慣れていくことが現実的で、この規模の企業では一気にキャッシュフロー、資金繰りの問題になると考えてしまい、自働化はやめておきました。

 

第4問

利益率は高いが、デザイナーがらみの面倒そうなモニュメント製品事業を伸ばす方策:これはちょっと想像を入れないと120字も書けない感じがした。かといって、突拍子もない空想で解答することはリスクが高いので、受注変動をいかに平準化するかの視点から、川上からの建築プロジェクトへの参入、デザイナーからの受注を待たずに、デザイナーを紹介し提案型営業ということを書きました。 また与件文の中で使っていないキーワードの7mの制約と作業スペースから、工場レイアウトの変更や7m以上の製品で幅を広げるなどを書いた筈。SLPだっけ? あの理屈を言っても現場ではカネもかかるし、笑われそうな気がするが、試験だから堂々と書きました。 

7mのモニュメント制作だけでもたいしたものだと思います。足場を組んで研磨したりすのでしょう。 でも、製造した製品の出し入れ、運搬があるので、バカでかいモニュメントは実際は工場で完成させずに、部分的に製造して、据付現場で組み立て、仕上げをするのが自然だろうなあ、なんて回答には無関係なことを考えながら、全体を見直す余裕も無く80分まで残り5分と気づき、あわてて文字を埋めました。

 

今更ながら

今更ながら、デザインを伴う特注品的なビル建築用金属製品と、芸術性のあるデザイナーのこだわりモニュメント製品で、2か月のリードタイムは長いのかなって感じる。 建築物の全体スケジュールの中で、約束した納期を守らないと、ゼネコンさんや施主さんからめちゃくちゃ怒られるだろうけど、そもそも2か月を半分の1か月にしたとしても受注が倍増するとは思えない。QCDのDが大切なのは当たり前だけど、ただ早いのではなく納期に正確であることが優先されるタイプだと思う。また、デザイン上の問題で手戻りが増えると、設計が悪いと社内コミュニケーションが悪化し、あいつの仕事はやりたくない、馬〇かあいつはと、生産現場と営業間の軋轢問題が深刻化する気がする。

だから、この事例Ⅲの本来の目的は、生産効率・回転率を上げて、利益率、生産性の向上につなげるために時間短縮するのではないかなって思います。だとすると、経営者に問題を深く認識させて、経営者のリーダーシップが必須になるが、どの解答にも影響しそうにない。出題者は、問題づくりのために実際のモデル企業の内容を大幅に変えてしまったのではないかと推測します。