令和2年(2020年) 中小企業診断士2次試験 事例Ⅱの考察

令和2年 中小企業診断士2次試験 事例Ⅱの考察

事例Ⅱは得意の筈のマーケティング。なぜ得意の筈かというと、15年ほど前、某巨大電機メーカー本社のマーケティング統括本部に在籍したことがあるからです。関連会社が1000社もあり、従業員数30万人の企業グループで、多様な業種に広がっているので、実はマーケティングの共通性は少なく、中小企業診断士試験とは無関係な不思議な世界で業務経験をしたことを思い出しました。

今年の事例Ⅱは、資本金450万円の従業員10名の、本州から海を隔てた島にある、ハーブ関連商品の製造・販売会社。商品開発、OEM生産、自社ブランド、地域(島)の活性化などがテーマで、4Pを意識した解答づくりにしました。【 】内は私の印象や考えです。

 

B社概要

この島は、絶景スポットが多数あり、比較的温暖で、マリンスポーツや釣りが楽しめる観光地であるが、若年層の人口流出、雇用機会不足、高齢化による耕作放棄地増加、農家所得の減少のという厳しい状況の中で島の活性化のため、島に自生していたハーブYを使って事業を起こしたというストーリー。ハーブの栽培方法の開発と、用途の開発(商品開発)から始め、最初は自社ブランドを立ち上げるが失敗。大手製薬メーカーZ社との取引のために島内に乾燥粉末の工場を建設し事業を軌道に乗せ取引実績を積み上げたが、約10年経って売れ行きが鈍ってきた。別のハープの栽培、乾燥粉末を始め、Z社以外のヘルスケアメーカーから引き合いが多いがZ社依存体質のまま、改めて自社ブランドに再チャレンジしてオンライン直売を開始したところ。【ハーブっていろんな種類があることは知っていますが、漢方薬、薬草、香草などと呼ばずハーブというと、何か新しい効用の高さを感じるイメージになるんですね。与件文ではさらっと開発と書いているけど、実際は栽培方法や農家への説得、そして商品開発で試行錯誤を繰り返したのだろうと想像しました。】

 

第1問

現状のSWOT分析として、それぞれを40字以内という素朴な問題でした。強みは、①栽培方法の開発、②Z社との取引実績、③高品質・安全追求の姿勢、④島内の工場生産能力、 弱みは、①Z社との取引依存、②自社ブランド開発・直販体制が未確立・ノウハウ不足、③会社と商品の知名度の低さ。機会は、①消費者の健康志向によるヘルスケア市場の拡大、②自生ハーブの効能、③耕作放棄地が多い、③島民の理解と協力。脅威は、①Z社製品のブランド力低下と売上減少、②島とハーブの知名度の低さ、③島の地域活力の低下

などですが、それぞれ40文字におさまるよう言葉選びが大変でした。【脅威に人口減少、高齢化なは、島の地域活力低下の原因ですが、高齢化による耕作放棄地は、ハーブ畑になる土地が余っているということで機会になると考えます。】 輸送コストを脅威として記載されていましたが、工場建設で解決した過去の状況は書かないように注意しました。【逆にこの粉末工場をもっていることが強み】

 

第2問

ハーブYの新たな取引先を探す上で、Z社製品と異なるターゲット層を獲得する、今後の望ましい取引先構成の方向性を助言せよという出題です。これは過去になかったタイプの問いのような気がしました。ターゲットはZ社製品よりも広い年齢層の女性とし、自社ブランドのオンライン直販に注力する方向だけだと与件文のままなのでスッキリしません。何を出題者が解答させたいかを想像し、カニバリゼーションを避ける方向、Z社依存を下げ、Z社以外との取引増加などを書いたつもりです。もっとプロモーション・コミュニケーションに関する方向性を書くべきだったと思います。直売により顧客ニーズを吸い上げ商品開発へ展開など。。。そうすると第3問設問2や、事例Ⅰの解答と被ってしまいバランスが悪い気がしました。【後で考えると、カニ張りゼーションを避けるターゲットとして、20歳前後の若い女性の美容ニーズ、50歳以上の健康に長寿ニーズの二つが思いつきます。 取引先構成としては、Z社の依存度を下げる方向がオチなんでしょうが、新しい二つのニーズターゲットにアプローチする製品メーカー、または自社ブランド開発という感じがすっきりしそうです。 しかし、限られた時間内で100字に収めるのは難しいので、この設問は部分点が取れれば良いでしょう】

 

第3問

「眠る前に呑むハーブティー」の自社オンライン販売

設問1:アンゾフの製品・市場マトリックスを使って説明ですが、市場を広げ、新しいハーブ製品なので、多角化戦略と書くと間違いそうな気がしました。 結局、ターゲットが少し広いが、同じヘルスケア市場での新商品開発戦略とした筈ですが、50文字で書くのが難しい感じでした。多角化戦略は経営資源の少ない中小企業に対してはリスクが高く、解答として選ばないようにというどこかの講師がYouTubeで言っていた言葉に従ってしまいました。

設問2:顧客を製品づくりに巻き込むコミュニケーション施策。双方向コミュニケーション、SNS活用、クチコミ誘発、島のハーブ畑やB社工場や新商品パッケージなどの写真・動画などを書きました。 これは大きく外れないでしょう。【これも後になって考えると付け加えるべきポイントがあります。 写真・動画を多用したSNSでいいね、フォロワーを増やし、オンラインサイトへの集客が1stステップ。 次に、ニーズや商品アイデアを吸い上げる手段として、公募するのが良さそうです。「巻き込む」ことの具体的アイデアを出さないとここは得点低くなるかも知れません】

 

第4問

X島宿泊訪問ツアーの企画を考えろという設問で、絶景ポイントや星空観賞などの観光以外という制約条件付き。過去問に何度か出たタイプです。 ①インスタ映えする青い空とハーブ畑のコントラストをアピール、②島民との触れ合いの機会、③B社工場見学とハーブを使った食品の試食会、料理教室、ヘルスケア講習会など思いついた単語を並べたと記憶しています。 このタイプの設問は、制約条件の地雷さえ踏まなければ、多少飛躍してもある程度得点できると考えました。【後になってゆっくり考えると、もう少し踏み込まないとB社長への助言として弱そうです。 ①インスタ映えする写真投稿コンクール、②農場体験や工場見学での島民との触れ合い、③移動時間などを利用したヘルスケア教室、④夕食はハーブを使った郷土料理づくり体験と島民もいれたBBQ大会など】

 

その他

今は試験対策としての考察ですが、実際にこのB社長から相談されたら、いくらの報酬額で、どんな助言ができるのか想像してみます。上記解答では生ぬるさを感じるし、報酬をもらうためには、財務分析や資料作りのテクニックも必要でしょうが、本質は「どうやってZ社依存から脱却し売上拡大させ、島の活性化を実現するか」を100回くらい自問自答しながら、もっと情報、調査が必要でしょう。

それには、もっとハーブの効能を研究機関や大学に研究依頼したり、観光事業の促進やスポーツ交流の機会を設けられないか島、県、文科省への働きかけ(補助金申請)、要は産官学連携が一つ。 ハーブ効果の種類を①健康、長寿(これが言い伝えでなく科学的根拠が欲しい)、②安眠・いやし、③美容(女性の絶対的強力ニーズ)に分けてもっと追求し、商品種類としては①飲むサプリメント(味無し)、②飲みお茶、③食べる食品、④香り・アロマに大別し、そのマトリックスの窓の一つ一つを誰と共同するか自社ブランドするかをしつこく検討すべき。たとえば、都市部のサロンチエーンや特定小売業者向けOEM供給などの他業種との連携もありだと思います。また、他の同種競合メーカーとの共同商品開発という手もあり得ます。

じゃあ、どうやって調査するのか? これは様々な提案書を作って、営業しまくるのが一番。診断士というより、アウトソーシングの営業・市場調査として委任か顧問契約して、3か月間くらい没頭しないとアウトプットできない感じがする。

 

最近気づいたのですが、経産省の補助金はコロナの影響で公募数が増加しパンク状態ですが、総予算は少ないのですが文科省の補助金(芸術などかなりマニアック)はまったく知られていないし、公募数が驚くほど少ないので、何か芸術やスポーツに関連した事業ということにすれば面白いでしょう。島の空港と港にポスターがあるより、本土の全国のターゲット層に見えるところにポスターを貼るべきだと思います。

 

最後に、島一周を車で2時間って、平均速度40kmで丸い島だとすると円周80kmとなり、直径25kmの島になります。 丸い島だと面積500㎢になり、こりゃ奄美大島や屋久島レベルのでかい島ですね? 有名じゃないでかい島? 車ではなく自転車で2時間じゃないのかな? 空港があるくらいだから、やっぱりそれなりの広さがある島なのでしょうね。