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著作権相談員養成研修

所属している千葉行政書士会やその下部組織の印旛支部では、ローカルな話題も含めて実務研修が昨年は多くありましたが、今年はコロナ禍のおかげで全く開かれていません。 今年登録した方は研修もなく自力で実務学習をしているのは可哀そうですね。 日本行政書士連合会、中央件数所のVOD研修は便利なのですが、テーマが偏っていたり、倫理的な研修、または特定の行政書士向けのニッチな研修が多く、且つ1本が長いのでしばらく開くこともなかったです。 しかも、音声が聞き取れる1.2倍や1.5倍の再生機能もないんです。

今日はちょっと時間があったので久しぶりに日本行政書士会の中央研修所のVOD研修を覗いてみたところ、令和2年 著作権相談員養成研修という6時間近い研修があったので、がんばって学習してみました。 この研修を受け、最後に試験で7割以上の成績が取れれば、文化庁などに著作権相談員として登録されるそうです。

どんな研修内容かというと大きく2つ。

一つ目は著作権概論。2級知的財産管理技能士の勉強をしたのはもう二年くらい前なので、著作権部分もかなり忘れていましたが、講義を聞いていると、かなり思い出せたし、過去の著作権改正の背景や、判例が多くて面白かったです。著作権だけで深い話があるものだと感心しました。そもそも自然発生的に権利が生まれる著作権は、著作人格権と財産権としての著作権に分かれます。そして著作隣接権や二次的著作権など、定義とその範囲が広いことが特徴であり、かつ、芸術家、音楽家、小説家、実演家などにとって、このネット社会の中で著作権を守り、また財産を残すかは重大な問題なのでしょう。 法律的には、完全な著作権(財産権)の譲渡を行うには、「著作権法第27条と第28条の権利を含む」と明記した著作権譲渡契約でなけらb効果がないことを初めて知りました。まだまだ勉強することがあるものですね。

もう一つの研修内容は、文化庁への裁定制度と登録制度? 通産省特許庁管轄の知的財産権(特許実用新案、意匠、商標)はすべて産業、または工業上の利用が前提ですが、文科省文化庁管轄の著作権はまったく性質の違う知的財産権で、無方式主義(登録制度なし)なのに、登録制度?と最初は訳がわかりませんでした。 

裁定制度とは、昔の著作物を放送や実演などで利用したいけど、著作権の権利者が不明(相続人不明含む)な場合や、権利者との契約交渉が不調な場合に、文化庁長官に裁定を申請するもの。権利者不明の場合で承認されれば、補償金を供託して利用が可能にする制度です。 なるほど、そういうことが必要な場合もあるのはわかりますが、年間全国で70件程度しか申請がないようです。 権利者不明の場合だと、申請に際しては、権利者を探す「相当な努力」を疎明しなければならないようで、かなり厄介です。 よっぽど、その昔の作品を合法に利用しなければならないケースでしかこの裁定制度を申告しないのではないでしょうか?

訳の分からなかった登録制度は、無名・変名で公表された著作権の実名登録(権利期間を発表起点から死後起点へ変更できるため)、著作権の移転(譲渡)の登録(譲受人の第三者対抗要件のため)、第一発行(発表)年月日の登録など。著作権発生のための登録ではなく、著作権者の権利の一部保護のためです。 面白いのは、不動産登記や特許登録とは違い、著作権には発生時点の登録がないので、二重譲渡が起きたら解決が難しいことです。そもそも死後50年だった存続期間をTPP交渉の影響で2018年改正により死後70年へ延長されたばかり。 死後70年というと相続人は孫か曾孫の世代になるでしょう。著作権の移転(譲渡)の登録をしても絶対的な権利主張ができない著作権なので、やはり著作権譲渡契約などをきっちり結んでおくべきなのでしょう。 また、著作者以外には遺言による相続人しか申請できないということに違和感が感じました。一般承継である相続なので、遺言による相続に限定できる法的根拠があるのか、調べてみようと思います。

 

最後の試験は30問で4問間違えただけで無事合格でした。2級知的財産管理技能士を取得して初めて良かったと感じた一日でした。 

 

因みに、知的財産管理技能士の試験は、3級に合格しないと2級を受験できないというファイナンシャルプランナーと同じやり方で、試験内容はどちらも90%程度同じ、テキストもほぼ同じ。 事務局と出版会社だけが喜ぶ不思議な制度です。