一時支援金の事前確認

一時支援金の事前確認

2021年1月、緊急事態宣言の影響緩和策の一つとして、日本政府が、中小企業・個人事業主のために一時支援金を決め、3月中旬~5月末までが申請期間でした。(事前に延長申請し承認されていた場合は6月中旬まで)

時短営業要請に従った飲食店に関しては、先に都道府県による協力金が2月から申請受付開始するも、不公平の問題や支給遅れの問題が発生しているようですが、私は直接関与していないので、よくわかりません。

昨年、2020年の持続化給付金も中小企業(最大200万円)・個人事業主(最大100万円)向けで、給付遅れが多発し、「持続化」にならない給付金と揶揄されましたが、一方で申請件数の0.1%程度で不正が発生。事業を行っていない者による申請、第三者による不正な代理申請、確定申告などの偽文書作成などの事件が発生したそうです。その影響により、今年の一時支援金では、登録確認機関による要件確認を中心に、「本人確認」と「事業を行っていることの確認」に重点をおいた事前確認が導入されました。 0.1%の不正件数のために、99.9%を疑うということでしょうか。

私は2020年に行った「持続化給付金」や「家賃支援給付金」について、基本的に無料で申請サポートを行っていたので、一時支援金の事前確認についても登録機関に登録されれば無料で行う考えでした。 経済政策としての補助金と違い、売上減少などの要件に合っていれば支給される給付金は、疫病という災難の中の特別・緊急の給付行政であり、その手続きを無料で行うことは当然の社会奉仕だと考えておりました。 実際、「持続化給付金」や「家賃支援給付金」については、既存客を中心に、特にパソコンの扱いが苦手な方々に対し、件数はせいぜい20件程度でしたが、ノートパソコンを持ち込み電子申請を手伝ったりもしました。

 

事前確認難民の発生

事前確認を導入された経緯は理解できるにしても、当初は、認定経営革新等支援機関、約1万者のみが登録機関に掲載されていました。 行政書士連合会経由で行政書士にも支援要請があり、登録機関の登録申請が始まったのが3月に入ってから。早速申請を出しても、承認までに約3週間でかかり、3月下旬になっていました。この時点でこの事務局(元請はデロイトトーマツ)の異様さを感じました。

既に1万者もある認定経営革新等支援機関(商工会、金融機関、税理士が多い)がどんどん事前確認をしているのだろうと思っていたところ、商工会・商工会議所は会員のみ、金融機関は融資顧客のみ、税理士の多くも顧客のみを事前確認の対象としているので、多くの事前確認難民が発生したようです。

私のホームページやブログ、またTwitterでのつぶやきにアクセスが集まり、4月中旬頃から申込が増えてしまい、この事前確認難民の問題に気づきました。あまりテレビを見ませんが、あまり報道もされていないようです。

 

行政機関への意見陳述

私は時間のある限り、一件、一者でも一日でも早く無料の事前確認をしようと心掛けましたが、4月末にはオーバーフローしてしまい、内閣府、経済産業省、そして総務省宛てに下記のような意見陳述の内容をメールしました。予想通り何も返事はありませんが、心ある役人には届いていることを願っています。

一時支援金の意見陳述

無料事前確認の登録機関への申込殺到

その後、5月は大忙しでした。委任を受けた補助金の事業計画づくりを10件ほど行いながら、一般の行政書士業務(問い合わせだけが大半)もあるので、3月末から5月末までの事前確認の実働日数は30日程度で、約250件の事前確認を行いました。ほとんどの申請者は何件も電話やメールを送るも断られ、高額報酬を求められてきた難民です。 涙を流して感謝される方も何人かいました。

しかし、私自身もオーバーフローしお断りしたり、メールに返信すらできなかった方が、100人から200人くらいいたと思います。残念です。

 

不可解な審査、事務局への不信

ところが、5月中旬頃から、一度事前確認した申請者から「不備理由」がわからないという相談がいくつも入ってきました。 内容をみると、最初は500文字程度の不備理由として「給付要件を満たさないおそれ~」から始まり、追加書類として保存書類の提出が求められていました。 その一部を提出し再申請すると、次は1,000文字程度の不備理由が返ってきて、その日本語は長く難解(不合理やミスも多い)で、事務局に相談した結果として、再々申請すると、今度は1,500文字程度の不備理由が返ってきます。 ますます、難解な日本語は、さらに意味がわからず、申請要領に記載の無い書類を求められるケースが出始めます。三度になると心が折れる申請者もいます。 

事務局に電話しても、何十分か待たされ、毎回別の人が電話口にでて、本人確認に数分かかった挙句、「不備理由は審査員の判断なのでわからない」「審査員は直接連絡しない」「誓約しているのだから、求められる書類を提出する義務がある」などと全く話にならない人が多いようです。

私に相談された申請者に共通しているのは、「個人事業主」「個人向けサービス提供」「現金決済」「店舗がない」「HPもなくブログ程度」の幾つか、または全部には当てはまっている申請者です。フリーのエステシャン、通訳、音楽や工芸などの芸術家、役者業などです。このパターンの個人事業者は請求書を発行せず、請求に基づく銀行振込はなく、領収書も発行しないことがほとんどなのに、「〇年〇月の請求書、領収書、通帳写し」の提出を求められます。無いものを提出できない、偽造しろと強要しているかのようなものです。または、「許認可が確認できない」ということもあり、許認可が必要な事業ではないので、確認できないことは当たり前です。

 

既に提出した確定申告書には事業収入額を記載しており、去年は持続化給付金を受け取っているなどの客観的な事実関係は通用しないようです。 去年の持続化給付金とは別の事務局と主張する人がいましたが、同じような給付行政の結果(事実)は証拠の一つになるでしょうと言っても埒があきません。

 

難解な日本語で質問攻めを繰り返すならば、申請者に電話してはどうなのか?事前確認をした者にヒヤリングしてはどうなのか?といってもダメなようです。

 

そもそも、事業を行っているかどうかという基準は何なのか? 基準が曖昧なのに、審査員の主観で疑いがあれば、申請者が諦めるまで追い込むという姿勢のように感じます。なぜなら、250件も事前確認をすれば、上記ケースにはまる申請者は50人以上になるのに、40人以上はすんなり支給されているからです。 不公平感、恣意的なものも感じます。否、行政法の一般原則の平等原則、信義誠実の原則、権利濫用の禁止のどれにもひっかかると考えられます。

 

私の事前確認は、事前に申請要領を読み申請書類を揃えていることが前提なので、事前確認できない・中止としたことも10件以上あります。 上記ケースにはまる申請者では、請求書などが無いものは仕方がないので、その地域や、事業の内容を聞き、その事業を行っている者だから言えることを聞き出して判断しました。 名前も知らない審査員は何を根拠に不公平に質問攻めをしているのかさっぱり理解ができません。 

 

尚、一時支援金の良かった点も一つだけ言っておくと、去年の給付金と比べて、審査が通れば、数日で給付が行われるスピードの早さです。当たり前のようですが、去年が酷過ぎたということでしょう。

 

給付行政への疑問

行政学の中には、給付行政という分野・考え方があります。「自由および財産権」に対する侵害や制限する侵害行政と対比し、補助金・社会保障などの給付の性格を持つ行政行為です。  経産省の補助金(採択率は100%ではない)とは違い、有事の際の給付金は財源を国債とし政府が決定し国会の承認の下に、要件に合う申請者は給付を受ける権利が発生すると考えます。厚労省の生活保護や雇用維持のための助成金に似ているでしょう。 その権利を持つ申請者が適正に申請要領に基づき申請を行ったにもかかわらず、かつ今回の場合は事前確認までおこなっているのに、行政機関が拒否するには法令の根拠が必要だと考えられます。 三次下請けのコールセンターの社員さんには行政機関という認識が無いようですが、拒否理由を求めても答えない、やり過ぎの追加要求は、行政手続法第7条、8条、9条、32条などに抵触するおそれがあります。

 

そもそも給付行政について、村上武則さんの「給付行政の理論」や行政事件の事例の本を何冊か購入し、勉強を始めました。給付行政の事案が行政手続法や行政不服審査法が適用されるか否かからになりそうです。