行政書士電子証明書による電子定款作成と認証業務【株式会社設立】

行政書士電子照明による電子定款作成と認証

コロナ禍の中でオリンピックが始まりましたが、連日のメダルラッシュによって驚きと感動の新鮮な気分にさせてくれます。

 

今月は行政書士になって初めて株式会社設立業務として、定款作成を行いました。2019年秋に千葉県行政書士会の研修資料や、会社設立関連の実務本を読み返し、定款の作り方、会社法の注意点などを思い出しながら、やっと定款原案を作り上げました。

 

会社のルールである定款内容については、多くの資料やネットで情報がたくさん溢れています。 生まれた時から権利能力を持つ自然人とは違い、法人は会社法を中心にした法の下で、会社の将来の夢も考えあわせて、様々な権利を明確化することが定款作成になります。発起人の考えを聴きながら、会社法の説明をしながら、一条毎に記載事項を決めていく作業になりますが、その内容は行政書士の方なら大きな差はないでしょう。

 

そこで、本ブログでは行政書士電子証明書を使っての電子定款の作成から公証役場での認証までのプロセスとして、同業の行政書士さん向けのブログ記事になります。

 

株式会社設立には、公証役場による定款認証に5万円強、定款の収入印紙が4万円、商業登記料に15万円以上と、ざっくり25万円は掛かります。発起人が自分でできればこの程度の費用で株式会社を設立できますが、行政書士へ定款作成を依頼、そして司法書士へ商業登記を依頼するとそれぞれ5万円程度の報酬料が別途掛かります。 行政書士会の研修会では、行政書士電子証明を使えば、定款の収入印紙4万円が不要になることを強調されるので、電子定款作成業務ならスムーズ・簡単、且つ発起人にとってほぼプラスマイナスが無いので良い業務だなって思っていましたが、実際にやってみるとめんどくさいことだらけだと気づきました。 発起人の知識や経験のよって大きな差が出ますが、定款文の作成&会社法の説明だけでも結構時間が掛かりますが、電子定款づくりだけでこんなに面倒だとはまったく予想していませんでした。 途中で諦めてしまう行政書士の方もいるのではないでしょうか?

 

行政書士電子証明書の取得

最初の行政書士電子証明書の取得は超簡単です。 電子証明書の「認証局」になっているのはセコムシステムズ株式会社で、「セコムパスポートfor G-ID行政書士電子証明書」という長ったらしい名称の利用申込書に、印鑑証明書と住民票を添付して郵送するだけです。 なんで民間企業が「認証局」になっているのか、印鑑証明書と住民票をファイルしているだけで、行政書士の本人かどうかの認証に本当に必要なのか疑問です。

個人のマイナンバーは市町村がやっているように、総務省か行政書士会で行政書士登録(事務所や職印も登録)する際に同時にやってくれれば良いのになって感じます。 セコムシステムズ株式会社に支払う費用は2年間有効で14,000円、3年間有効で21,000円。本人確認である実印の効果と、改ざんが無い事を証明する仕組み、「認証局」の役割は情報セキュリティ分野の基本なので理屈はわかりますが、このせこい費用はセコムシステムズのぼったくりのような気がします。 因みに商工会議所の会員だと特別価格という名称で2,000円ほどディスカウントがあります。 そんなに嬉しくないディスカウントですね。

 

オンライン申請用ソフトのインストール

法務省の「登記・供託オンライン申請システム」という複雑なITシステムには手こずります。 不動産や法人の登記情報を取得する際に、オンラインで申込みができ、ちょっと手数料が安くい世の中の一般人には無用のシステムだと思っていましたが、平成23年ごろから登記や様々な手続きまでオンラインでできるようにする大規模なITシステムです。複雑な要件定義を解読しながらITシステム構築したITベンダーのSEの努力が滲み出ている、オンプレミス開発でどれくらいのSEを何か月投入したのか心配になる感じです。 はっきり言って、「直感的に分かりにくい」「UX無視」です。 申請書類作成メニューをシステム内に作り込めなかったのか、後から付け足したのか、「申請用総合ソフト」を外出しにしてユーザー(申請者)にダウンロードさせています。 また、不思議なのは電子署名のプラグインソフト「Signed PDF」というソフトまで開発して使わせようとしています。 基本的に国民の利便性を考えて無料利用が前提なのは当然ですが、こんなことまで法務省で揃える必要があるのか、予算が余ったから作ったのでは?などと考えてしまいます。 

 

電子定款づくり

Wordで作成した定款をPDF化して行政書士証明書を付ける作業で躓きました。

 

行政書士会の研修会(2回も受けた)や「登記・供託オンライン申請システム」では、①WordをPDF化するため、②「Signed PDF」で電子証明書を付加するには、「Adobe」の有料のAcrobat Pro/Standard DCが必要ということがベースになっています。

 

当職としては、「①のPDF化するのに、なんでPro/Standard DCがいるのか?」「Wordの中でPDF保存すれば良いだけではないか?」と違和感を感じました。 PDFはどんなプラットフォーム上でも表示可能な便利な仕組みなので、35年くらい前から(昔は有料パッケージを購入していた)多用していました。 Pro/Standard DCの機能は、PDFのまま編集や他のフォーマットへの変換が可能で、今はパッケージ売りをせず、最低1年契約の月額1500円から2000円程度。 編集は元のWordやExcelで行えば良いので、ここ20年以上は無料のReaderだけを使っている状況です。 しかし、法務省が作成した②の「Signed PDF」は Pro/Standard DC上でしか電子証明書を付加できないようで、電子証明書の付け方について「登記・供託オンライン申請システム」のコールセンターへ電話で問合せしても埒があきません。 PDFは有料・無料に関係なく、電子証明書を付加する機能が付いている筈なので、そのやり方を教えてもらおうと探しましたが、言葉が通じない世界は怖いです。 コールセンターでは「Adobe」へお尋ねくださいと冷たい対応です。

 

それでは「Adobe」へ問合せしようとしても、まずコールセンターの電話番号が見つかりません(これは米国系IT企業、Facebook、Google、Twitterなども同様) チャットやメールでの機械的で無機質な無駄なやり取りの挙句、やっと直電話を教えてもらい電話をするも、内容をまったく聞かず「無料のReader DCについては電話サポートをしていません」の一点張りで切られてしまいます。質問事項を明確にして丁寧に問合せをしていたことがバカバカしくなりました。確かにドキュメントファイルとしてデファクトスタンダード化した「Adobe」のPDF事業は大成功でしょうが、有料・無料に関係なく「Adobe製品」に対する最低限の説明責任があるでしょう。いつか公正取引委員会に優越的地位の濫用としてチクってやろうと思いました。

 

結局、自力でAcrobat Reader DCの中で電子証明を付加できました。 めちゃくちゃ簡単で拍子抜けします。 左上メニューバー下の「ツール」をクリック→「証明書」アイコンをクリック→上の「電子署名」をクリック→電子証明書印を付ける場所(フィールド)を指定→電子証明書ファイルの指定。 たったこれだけ(数分で終了)のためにネットで情報を探し、意地悪なコールセンターへの電話で何十時間も浪費させられました。

 

理屈はシンプルな電子証明の仕組みを、こんなに分かりにくい運用を行い、説明資料のページ数・文字数ばかりが多く、そして肝心なことは書いていない、誰に尋ねても解決策にたどり着かないという状況にはかなりストレスを感じました。

 

公証役場とのやりとり

当職の場合は、JR千葉駅近くの千葉公証役場にコンタクトしました。 電話応対は非常に丁寧で、メールで定款内容をチェックしてもらったら一発OK。あとは「申請用総合ソフト」で電子署名付PDFを送信して、日時を決めて取りに行くだけです。最近はオンライン面談が可能で、嘱託人の本人確認などを行い、郵送してもらえるそうですが、千葉公証役場には行ったことがなかったので取りに行きました。

 

ところが当日困ったことは、その場所が見つかりません。スマホで地図を確認すると野村證券千葉支店の近く。 蒸し暑い中、野村證券当たりのビル周りを二周するも、どこにも公証役場のサインがありません。 よく住所を見ると〇〇ビル8階。 野村證券と同じビルの別入口の小さなエレベータ横に小さな文字で「千葉公証役場」を発見。 「もっと大きく看板でも出してよ~」って感じです。

 

電子定款の原本は公証役場に保存するという形です。原本コピーをCDRに焼いてくれたのは親切なのですが、「このCDに何の意味があるのですか?いつどのように使うのでしょうか」と書記官に尋ねましたが、首をひねっておられました。 結局、まだ紙文化なんですね。登記用と予備として、定款のハードコピーに「同一の情報の提供」が付いた紙を2部もらいました。 また、嘱託人である当職宛ての「申告受理及び認証証明書」も一部もらいました。これまた「何の意味があるのでしょうか?いつどのように使うのでしょうか」と書記官に尋ねたら、「銀行さんによっては求められるそうです」とのこと。 どこの銀行かまでご存じなかったようですが、何のための電子定款なのかと疑問だらけです。 当職の経験上、遺産相続のときも、民間企業である金融機関の手続きの膠着化や無意味な社内ルールにはうんざりさせられることがあります。

 

備考

電子証明書は、実印による本人確認(印鑑証明書代わり)だけでなく、原本確認と改ざん防止効果があるのですが、定款作成時の作成者(嘱託人)の電子証明書だけでなく、発起人や公証人の電子証明書も追加してはどうかと思います。税務署などの行政機関や金融機関でも認証局に原本と同一の確認をすることを定着化することが、行政手続きのデジタル化の一丁目一番地ではないかと感じます。(押印文化をやめることがデジタル化ではないというのが持論です) 要は、法務局だけでなく、定款だけではなく、様々な公文書や私文書に作成者・責任者が電子署名し、その文書の利用者や確認者が、認証局に簡単・迅速に認証してもらう運用が定着しないと、今のままでは宝の持ち腐れでのような気がします。

 

また、情報セキュリティの観点からは、ファイル形式の電子証明書だけではなく、静脈などの生体認証を付加すべきだと思います。ま若しくは、認証局からの認証ファイル(たった5Kバイトなんです)は2年間または3年間有効のままではなく、その都度、または定期的に最新のファイルにすべきではないかと思います。(認証局の運用が複雑になり過ぎるので避けたいでしょうが) 今のやり方では、パソコンが乗っ取られたり、電子証明書自体が盗まれる危険性があります。鉄砲や刀剣に対して重装備の戦国武将が、兜をかぶるのを忘れて、あっという間に頭を射貫かれてしまうようなものです。

 

現在、ほとんどの行政手続きに添付する印鑑登録証明書、住民票、戸籍、登記などの公文書は発行から3か月以内などの制限が付いています。 許認可申請などは個々の法律によって要件が規程されており、それに基づいて必要添付書類が定められる理屈は理解できますが、発行からの時間ではなく、申請時点で原本内容と同一かどうかだけが重要な筈です。 逆に今までの紙文化の行政手続きの方が煩雑なのでミスが多く、ミスをゼロにするためのローカルルールが厳しくなるという悪循環が起きてきた気がします。

 

最後に、電子証明書の認証局や、悪徳商法っぽい「Adobe」などの業者が、多数(何万~何百万人規模)の士業や国民から、ちまちました小銭を吸い上げる仕組みに胡坐をかいていることに呆れます。 個々の月額経費としては小さいのでしょうが、たとえば、10万人(士業、国民) × 月額@1,000円 × 12か月だとすると、12億円が毎年の安定した収益です。 10万人が一年で平均5回利用するとすると、一日たった1,370回程度の利用(大型ITシステムのアクセス数としては非常に小さい)。 IT業者としてはサーバー管理費・運用費で年間1億円くらい掛かったとしても11億円の粗利になります。 デジタル化社会になれば、利用者数は100万人規模や1,000万人規模になるでしょうから、やっぱり認証局機能や各種申請システムは行政側で無駄が少なく、安全性が高く、効率的な運用をすべきだと考えます。 

 

そういえば、「登記・供託オンライン申請システム」って平日8時30分から19時までしか稼働していません。せっかくここまで作りこんだのに365/24稼働にしないのは、需要が少ないからか?いや、利便性と必要性を向上させる意識が低いからこんな状況なのではないでしょうか?

 

おまけ

登記・供託オンライン申請システム」を触っていると、会社設立について、定款認証や登記だけでなく、登記完了後の税務署、地方公共団体、年金事務所など複数の行政機関での手続きがワンストップでできるようなコンセプトがあります。 内閣府の「法人設立ワンストップサービス」で、問診結果を出してくれて、それぞれの手続きに漏れが無いようにしている程度ですが、こういうコンセプトを持ってITシステムを構想しているお役人がいることは素晴らしいことだと思います。 今年令和3年2月から運用が開始されたばかりです。

 

このように国民の利便性を第一に考え、行政手続きの簡素化・迅速化ができれば、未来の日本人(子供のときからスマホ世代)にとっては行政書士・司法書士・税理士などに煩雑な手続きを依頼する必要性が減るでしょう。 ということはまた失業しちゃうのか? まぁ、いっかぁ

 

行政書士としては、法務局への登記申請や、税務署・労働局などへの申請の代理を、有償・無償にかかわらず業として行うことはできませんが、こういう方法があることを積極的に紹介していこうと考えています。