補助金申請書作成・申請代行についての考察

補助金申請書作成・申請代行につての考察

コロナ禍の中、さまざまな国(経産省)や地方自治体の補助金・支援金・給付金のサポートを行っており、中には申請書類の作成や電子申請の代行なども行っています。 その中で、事務局へ電話で質問したり、申請者の特異な条件について確認する際に、「申請者本人からの質問にしかお答えできません」と冷たい返事が返ってくることがあります。

一応、許認可申請の時のように、申請者から業務の委任を受ける際に委任状を頂いていますが、電話での質問だけでなく、申請時点でもその委任状を見せることはありません。「なぜ申請代理人が本人の代わりに質問して、直接返事をもらえないのか」非常に疑問です。 わざわざ本人に説明し、本人から電話してもらい、その返事を聞いて、また相談し説明しながら申請書類を作成するのは、面倒くさいことです。

 

行政書士法

以前、補助金の申請代理が違法かどうかが話題になったことがあったとき、行政書士法を説明したことがあります。 以下はその目的と業務について、

 

(目的)
第一条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の二、第2項の「他の法律」とは弁護士法、司法書士法、税理士法などの他の専門士業の法律を意味します。即ち、裁判所、法務局、税務署、労働局などを除く、経産省や地方自治体のほとんどの行政機関へ提出する書類作成は行政書士の排他独占的業務ということになっています。これには経済施策としての補助金・支援金・給付金などが当然含まれると解釈できます。

 

平成1年11月26日 参議院総務委員会

一般に上記のように行政書士法を説明してもピンときませんね。もう少し具体的な例として、平成1年11月26日の参議院総務委員会での質疑の議事録を読みました。

 

この日の委員会では、珍しい議員立法である行政書士法の改正案が全会一致で可決になったのですが、その前段階の質疑で、「被災した中小企業を支援するグループ補助金制度に対し、コンサルタントなどと称した非行政書士が申請書類の作成を報酬を得て行った事例があり、行政書士法違反による罰金刑が処せられた」という説明があったり、「ホームページ見ますと、非行政書士、そういう行政書士の資格を持たない方の集まりであるにもかかわらず、補助金、助成金の申請を代行いたしますという、こういう告知がされたりしております。高市総務大臣、こういうことをちゃんと調査してただす必要があると思いますが、ますが、いかがでしょうか。」という質問があり、当時の高市総務相大臣も「御指摘のような事案があってはならないと考えます」と答弁しています。

そうすると、行政書士登録をしていない税理士や、中小企業診断士の中で補助金申請の書類を作成する人が多いでしょうが、すべて行政書士法違反になりますね。一般的に、パソコンの扱いができる他人が事業計画を作成したとしても、申請者がその内容を自分で作成したとして申請することはあり得ると思います。今の補助金申請は100%、パソコンを扱える人しか申請できない仕組みになっています。問題になるのは「非行政書士が、他人から依頼を受け、報酬を得て、補助金申請書類を作成」することなのか?無償だと問題にならないのか? ネットなどの情報では、補助金額の50%や、何百万円~1千万円レベルの報酬を得るコンサルもいるそうです。それが行政書士なのかどうか知りませんが、法外な報酬料を取ることが補助金規制法に抵触するのか?それならば、報酬額の規則やガイドラインがあるのかな? 疑問ばかり出てきます。

 

そもそも行政機関の末端(請負業者社員が多い)は、行政書士業務を知らない人が多いでしょう。また、非合理的で不当な要求を行う事務局運営(よくあること)も補助金規制法に抵触すると考えられます。

 

行政書士業務の周知徹底について

上記総務委員会では、行政書士業務の周知徹底について、具体的な対策案も出ていました。

(1)例えば熊本県では、非行政書士による書類作成は違法であるという旨のプレートを作って申請窓口に置いているということがある、全国の自治体等でこういう対策を広げること。

(2)例えばグループ補助金の申請書には、書類を作成した行政書士の名前、住所を書く欄、あるいは行政書士の職印を押す欄がありません。これ作ることで、こういう非行政書士による代行という違法な行為を抑制する。

(3)非行政書士に申請書類の依頼をしていないとの確約書の添付を義務付けるということも効果的ではないか。

 

うんうん、全部やって欲しいものですね。法務局へ行くと、「登記申請は司法書士のみ」というポスターがあり、税務申告書には税理士が職印を押す欄がありますので、そういうのと同じやり方ですね。

 

実務上の問題

一方、補助金申請、許認可申請などの行政書士業務だけでなく、法務局の各種登記申請、税務申告、たとえ裁判の原告でも被告でも、本人がやる気になれば、時間が許せば、すべて自分でできるものです。それぞれの法律、規則、慣習が複雑で難解なので、いわゆる士業に依頼するケースが多いということなんでしょう。そして、行政側も士業に間に入って欲しいのが本音なんでしょう。 

 

話は変わって、今月、デジタル庁が発足し注目されています。「デジタル化」という言葉のイメージだけでなく、さまざまな行政サービスや行政手続きが、誰にでも簡単に早くできる世の中になるのでしょうか? それぞれの複雑な法律、規則、慣習が簡単に理解されるとは思えません。

 

現時点の電子申請にもいろいろあります。年に一回の税務申告(e-tax)は使いやすい(慣れた)けど、経産省のJグランツ、総務省のe-Gov、法務省の登記・供託システムなど、実際にやってみると、呆れるほど使いにくいところがボロボロ出てきます。それぞれ個別最適なシステム設計を目指したのでしょうが、ITリテラシーの低い役人が要件定義をしたのか、センスの悪いSEが設計したのか、IT投資の無駄も多いでしょう。特定の人にしか使いこなせないITシステムは、「デジタル化」イメージとは真逆です。 他の細かい弊害は、文字が多過ぎて読めない・理解できないのに「承諾」(押さないと前に進めない)、コピペによる単純ミス多発、プルダウンの多用、ページ遷移が多過ぎ、注意書きの多さ、大文字・小文字・カンマ有無などの制限、和暦と西暦の混在などいっぱい。

 

「デジタル化」で、さまざまな行政サービスや行政手続きが、誰にでも簡単に早くできる世の中には、まだ50年くらいかかるのではないでしょうか? 

 

おまけ

先日、88歳の母親のマイナンバーカードを申請し、事前に電話アポを入れて取りに行ったら、「本人でないとお渡しできないかも。。。」と言われ驚きました。所定の代理申請欄があるし、そこに自署しているのに変なことを言う役人がいますね。 そして、待たされている間、改めてA4の紙にマイナンバーや住所など個人情報を書くことを求められ、それは申請書に記入した内容と同じで、既にデータ化している筈なのに、なんで人が多い会場の中で、改めて書かせるのか? 更に、その紙に自署して押印しろとのこと。 三文判はいつも持っているけど、自署か記名押印のどちらかで法的効果はあるので、自署押印は不要でしょうと意地悪してしまいました。