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低感染リスク型持続化補助金の支払遅延が多発!

低感染リスク型小規模事業者持続化の支払い遅延

令和3年度、計6回の公募が行われた低感染リスク型小規模事業者持続化補助金において、補助事業が終了し実績報告を行っても、その後半年以上審査中のまま支払いが行われないという詐欺的な事案が多数発生しているようです。事業者は既に経費の支払いを行い、補助事業を完了し、期限通りに実績報告も行っています。それなのに、半年以上も補助金の入金がないとキャッシュフローが悪化することは当然です。

 

そもそも小規模事業者持続化補助金は、従業員5名または20名以下の日本に300万者以上存在する小規模事業者(個人事業主含む)向け経済施策で、基本の補助金は50万円でした。 設備費用や広告宣伝費などに使用できる補助金として毎年多くの小規模事業者が利用してきたものです。 コロナ禍の中で、令和2年度は「コロナ型」として補助金を倍増の100万円、そして令和3年度は「低感染リスク型」として公募要領が少し変えて、やはり100万の補助金額上限で、6回公募での採択者数合計は3万者を超えました。

「低感染リスク型」とは、コロナ禍で売上または利益が一定程度以上減少した事業者が、事業を継続させるため、非対面型ビジネスを展開するために積極的に設備やシステムを導入する費用の一部を補助することが目的でした。

当職は、何十社もの事業者の事業計画作成の支援を行いましたが、補助事業の内容は似たりよったりになってしまいました。 今まで対面型、即ち人と会って仕事をしていたことを、非対面、即ちオンライン面談を多用し、オンラインでも商品説明、見積や資料の共有、スケジュール管理をスムーズに行うため、またはネット販売やSNSを使ったWeb集客など、様々なオンラインツールを導入することがどうしても多くなったことは必然です。

 

意見陳述

令和3年度の第1回や第2回公募で採択された事業者の補助事業が終了し、今年に入ってから次々と実績報告を行い、一部書類ミスなどの修正があったものの、その後約半数の事業者は審査中のまま、半年以上放置されているケースが多発しています。

 

そこで、令和4年10月28日、以下の内容で、経済産業省 中小企業庁、内閣府(首相官邸)、総務省(行政相談窓口)、国土交通省へ意見陳述を送りました。

 

タイトル: 補助金の支払遅延に関する意見陳述

 

行政書士登録番号第19101076号、および中小企業診断士登録番号421197の櫻井義之と申します。令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>について、当職が事業計画作成を受任した中で、下記申請者は採択および交付が決定し、補助事業完了後の実績報告を行うも、約6か月から8か月間も審査中のまま、補助金の支払いが大幅に遅延しております。

 

本補助金の目的である「新型コロナウイルス感染症 感染防止と事業継続を両立させるための対人接触機会の減少に資する 前向きな投資を行い、ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等の取組を支援する」の緊急性や必要性を鑑みると、常軌を逸した当該補助金事務局による不当な運用ではないかと思慮します。そして、補助金適正化法第三条第一項の(関係者の責務)「各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、(中略)、補助金等が法令及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。」に反しているのではと指摘します。

 

各々の事業者(申請者)は、コロナ感染症の影響による売上減少などの苦境の中で、前向きに経営を継続している建設業者ばかりです。中小企業者の資金不足問題も共通しています。下記申請者の事例は一部であって、実態は更に多くの事業者(申請者)で同時に起きているのではないかと危惧しております。何卒、公正、迅速な給付行政の事務を行うよう、ご高配いただきたくお願い致します。

 

(当職が事業計画書作成を支援した7社の社名、申請番号を記載しました。)

 

考察

何件かの申請者と事務局のやりとりを聞くと、推測ですが、この補助金事務局は、「特定IT事業者がビジネスチャンスとして積極的にオンラインツールやHP制作を売り込み、事業者が主体的に補助事業を計画し遂行していないのではないか?」と疑っているのかも知れません。 確かに、HP制作、ECサイト、運送業などはコロナ禍の中で、伸びた業種でしょう。

事業者に主体性が無ければ(誰かが補助金目当てででっち上げた補助事業計画を作成)、補助対象にならないことは公募要領に記載があり当たり前です。しかし、主体性をどうやって判断するのでしょうか? ほとんどの事業者は、「補助金が出るんなら、それで効果が期待できるならやってみたい」「しかし、どうやって事業計画を作るのか、どうやって申請するのかわからない」などの状況が一般的です。 経済産業省中小企業庁が考えるような立派な経営戦略や事業計画をほいほい作って、パソコンを使いこなす小規模事業者がどれくらいの割合なのか知らないのではないか?

 

そういえば、令和4年度の持続化補助金では、Web関連経費は全体経費の1/4に制限する要領に変わりました。 よっぽど、HP制作、ECサイトなどの経費支出が増えたのでしょう。 こんな制限をすること自体が、自由経済ではない、統制経済的な行政行為の雰囲気がします。 何が問題で、どうしてそんな制限を設けたのかの理由説明も無いし、公募要領の一部をこそこそ変更し、変更履歴も無い。 後出しジャンケンのような運用姿勢。

 

そして、何かの理由があるにせよ、補助事業が終了(経費が発生し支払完了)し、期限通りに実績報告が済み、報告資料として実際上の問題が無ければ、補助金を支給することが国の責任だと考えます。半年以上も放置し、何も説明も無いのは常軌を逸しています。 

 

経済施策としての各種給付行政(支援金、給付金、補助金など)については、各事務局の不当・不公正・不透明な運用に対して、何度も何度もクレームや意見陳述してきましたが、低感染型も同じような状況になってきました。これらの問題の原因は、場当たり的なばら撒きを行う政府(行政)トップが政治的決断をしても行政末端ではブレーキをかける構造、ロクな議論・追求を行わず予算承認し「喉元過ぎれば忘れる」国会、制度設計・予算執行する経済産業省役人の能力と責任感、そしてその事務を高額で外注へ丸投げしてしまうこと、それが複合的に絡み合った結果だと考えます。

 

何のための「低感染リスク型小規模事業者持続化補助金」なのか? 補助金規制法は申請者の不正を許さないことばかりを強調していますが、第三条第一項には、国側(中小企業庁)は公正な運用の努力義務が課せられています。 中小企業庁から外注の2次下請けか3次下請けに臨時的に雇われた審査員が国の権力を振りかざし、ローカルルールを事業者へ従わせようとする傾向には苛立ちを感じます。 個々の事案で何らかの理由があるにせよ、半年も理由説明が無く未払い状況は不公正であり不当な行政行為だと捉えられるでしょう。少なくとも民法で定める金利くらいは上乗せして給付すべきだと思います。

 

付け加えて、行政書士らしく給付行政の救済方法について考えてみると、申請し事業計画を審査し採択決定、かつ交付額決定までは、「処分性なし」のために審査請求や訴訟の対象にならないと理解しています。しかし、採択された補助事業計画に沿っって実行し、経費を支出し実績報告まで済むと、ここから補助金支払の決定には補助金適正化法に則った「処分性あり」と解釈できるのではないかと思慮します。または交付決定を国と事業者間の契約とすると、支払遅延または不払いは債務不履行となり、事業者である債権者は損害賠償請求が可能だとも思慮します。