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事業再構築補助金の交付申請審査の大幅遅延

事業再構築補助金の交付申請審査の大幅遅延

蒸し暑い日が続いています。今日は室温32度ですがエアコンなしで何とかやっています。

久しぶりにブログを書いてみようと思ったのは、昨年6月応募、9月採択決定した事業者さんの交付申請がまだ認められていないと泣きつかれたことがきっかけです。

この事業者は、千葉県で農地を借りて(すごく安い)、農業技術を1年以上かけて学び、融資を受け農業設備を購入、そして太陽電池やドローンを使ったスマート農業を目指すという前向きで真面目、熱心な事業者です。 事業再構築補助金での資金調達のご相談を受け、ネギや唐辛子の農作物を加工し販売する「6次産業」として、事業計画を練りました。 元々は廃棄物処理設備の販売やコンサルティングを行っていた事業者なので、将来は作物のリサイクル、SDG’s事業、または経産省や農林水産省が推進する未来型農業の担い手になる大きな夢がありました。

 

経緯

①令和4年6月、事業再構築補助金第6回公募に申請

②令和4年9月、採択決定

③令和4年11月20日、交付申請提出 (その後、5か月間、何度問い合わせしても審査が進まなかった)

④令和5年4月19日、事務局(審査オペレーター)より数か所の修正、追加補足説明などの指示を受け、4月23日交付申請を再提出 (推測ですが、審査オペレーターの怠慢か、能力不足が起きていたのかも)

⑤令和5年5月、審査オペレーターが突如退社し、新しい担当者より数回にわたり修正の指示を受け、その度に再提出

⑥令和5年6月26日、過去の修正指示とは別の内容、①(建物、機械)の業者選定理由が不許可となり相見積を求められる。②広告宣伝・販売促進費の一部(のぼり、ラベルシール)は消耗品として対象外であることの指示を受けた。(審査結果を口頭で伝えるだけで、理由を尋ねても答えられないとのこと、指示した通り修正しない、または諦めないと交付額決定はできないとのこと)

交付申請から7か月が過ぎて、一方的な強権発動です。

 

審査内容

事業者本人が嫌気をさして困り果てているので、当職が代理として、事実確認の為、事務局(審査オペレーター)へ電話してみることにしました。

 

まず、第一声は、「事業者本人でなければお話しできません」とのこと。 行政書士法に基づく代理ですよと説明すると、数分待たされてやっと会話がスタート。 上記経緯の事実確認と、最新の指示内容である上記①②の真意を尋ねてみましたが、「審査内容はお答えできません」の一点張りなので、どうやれば良いのかを聞き出す努力を行いました。

 

①の業者選定理由は複数の設備が対象で、加工用の設備はJA(農業全般の協力関係、パイプが太い)から、特定設備は代理店を通さずメーカー直を理由としておりましたが、「ネットで検索すると、同じ設備が複数販売されているので、形式的に相見積を取得するように」との助言でした。 ちょっと待ったですよ。 そもそも50万円以上経費についての相見積が必要なのは、経済性の考慮、および不正を防ぐ目的としていることは承知していますが、形式上の相見積に何の意味があるのでしょうか? それも交付申請から7か月も経っており価格変動も起きています。わざわざネットに価格を出している業者にこれからコンタクトを取り、1円でも安い業者を探せと言っているのかと驚きました。JAの協力を得てこれまで準備をしてきたのにJAを通さない、またはメーカー直から無理やり代理店経由させる合理的理由がありません。

 

審査オペレーターの言い分は、「1円でも安いものを探せ、JA経由やメーカーダイレクトがダメだと言っているわけではない、語弊があるかも知れないが、現見積より高い見積を取ればよい」とのこと。 これは本来の主旨から外れ、何が何でも形式的な相見積にしないと交付決定しないぞという事務局の身勝手な発言であり、不当だと考えます。 当該事業者が提出した複数枚の業者選定理由書を読みましたが、それぞれに合理性があり、商道徳上の公正さもある理由になっています。不正の臭いはまったくありません。

 

当職の意見

令和3年2月、当該補助金の事務局を当初400億円弱で受注した㈱パソナは、選定理由として「過去実績があり、確実かつ早期の運用ができる」と経産省HPに公表されてますが、本件に関しては全く機能してません。二次下請けの審査員の資質にも問題があるのではないかと考えます。

なぜなら、上記②広告宣伝・販売促進費でも、公募要領通りに「マーケティングツール活用等に係る経費」として、加工品販売の為のチラシや看板の経費は対象とされているも、販売店でののぼり(看板と同様の効果)とラベルシート(ブランディング手法として効果がある手段)の経費を対象外とするとは、意味がわかりません。マーケティングの基礎知識や経験が欠けているのではないかと推察します。そもそも事務局(審査オペレーター)は、審査結果を電話(口頭)で伝えるだけで、書面提示を拒否します。審査員は別におり、何か質問等を行っても、後日審査員の協議の上の回答となり、非効率過ぎます。 ものづくり補助金だとこのレベルの話になると事業者と審査員が直接会話したり、書面やりとり含めて、何とか前に進めようと努力されることがありますが、この事業再構築補助金(各書類様式はものづくり補助金のものを流用)の事務局運営は酷すぎます。

 

補助金適正化法の違反

補助金の予算は、国会で決定し、その運営は経産省中小企業庁の行政行為です。一般に補助金のような給付行政は、負担付贈与契約であり、処分性が無いことを理由として、不服審査請求や行政事件訴訟の対象外とされています。

 

しかし、本件は、補助金適正化法の第1条、「この法律は、(略)その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的」から外れており、第3条「各省各庁の長は、(略)、公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。」、および第6条2項「各省各庁の長は、補助金等の交付の申請が到達してから当該申請に係る補助金等の交付の決定をするまでに通常要すべき標準的な期間(略)を定め、かつ、これを公表するよう努めなければならない。」に違反していると考えます。

コロナ禍の中の給付行政では、○○一時金、○○給付金、雇用調整助成金などで、数々の詐欺罪の立件が続いており、補助金についてもこの補助金適正化法に基づく不正な申請を排除しようとする意図はわかります。 しかし、本法律が、行政側(事務局)の不当な行為にも一定の歯止めかけようとしていると解釈できます。 努力義務の部分は、法的義務では無いと考える人もいるかも知れませんが、何度も言いますが、交付申請から7か月も経っていることは常軌を逸しています。本事業者にとっては補助事業の期限は残り5か月です。

 

考察

当該補助金の目的である「思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すこと」を、この事務局は忘れ、逆にブレーキをかけている、または事業者のモチベーション低下(意欲を削がれる)を起こしているのではないでしょうか? これまで9回の公募で採択された事業者が何万社もありますが、どれだけの事業者がスムーズに補助金を獲得できているのでしょうか? どれくらいの事業者が途中で諦めているのでしょうか? 1兆円を超える巨大予算の費用対効果はどうなっているのか?(確か、昨年会計検査院から経産省の施策推進状況に対し注意勧告が出ていた筈)

 

当職は経済産業省認定の中小企業診断士ですが、国の中小企業政策全般の運用、そして給付行政の運用について大きな疑問、不満を持っています。

 

事業再構築補助金が開始された初期にも同じようなブログを書いていました。 この時に感じた違和感、心配が多発してしまったということになります。

 

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コメント: 1
  • #1

    大山伸善 (金曜日, 16 2月 2024 10:06)

    はじめまして。事業再構築補助金のブログを読んで思わすコメントさせて頂きました。
    弊社も第5回で2022年5月に採択され、2022年12月に交付申請しましたが、延々と審査が進まず、半年以上経った頃から審査が始まり、様々な難癖で差し戻しを繰り返され、採択から14か月の期限までに交付決定が下りず、最終的には2か月も過ぎた2023年10月にやっと交付決定に至りました。
    交付決定後はたった2週間で実施報告を上げないと取り消しと言われ、必死に実施報告を完了させたのも束の間、今度は実施報告の審査に更に3か月以上かかっており、一昨日には事務局より「今年に入って新たに方針転換があり、2月に入ってずっと審査が止まっている。6-7割の案件が今回の方針転換で止まっている」と連絡がありました。Youtubeなどで関連の動画を調べたところ、どうも「本社所在地で新規事業を行った場合、建物費を認めない」という後出しじゃんけんの要件を適用するようなお話のようです。事務局に何故審査が止まっているのかを聞いても、審査官自体が「私もわかりません」と繰り返すだけで、何が起きているのかわからない状態です。弊社の場合、既に採択から2年近く経ってもまだ支払いに至っておらず、最大費用である建物費が否認されてしまう危機に瀕しております。交付申請の審査中にもブログにあるような理不尽な否認が多数あり、実際に事業に専用で使用していても「汎用品は他に使おうと思えば使えるから認められない」という理由で例えばプロジェクターのHDMIケーブルやUSBケーブル、防犯カメラ等、様々な機器や材料が否認されました。
    それでも「審査を止められたくなければ従え」の一点張りで、泣く泣く申請額を減らして審査を進め、交付決定を何とか得て、全て完了した後の実施報告の段階でおよそ半分を占める建物費を否認しようとするとは、もう裁判するしかないほどの内容だと考えています。
    このような事例が他にも多数あると推測しております。
    1社1社では声を上げても小さすぎて相手にされないので、複数で声を上げないと状況を変えられないと思います。
    取り急ぎ、他にもこういう会社があります、という事をお伝えしたく、コメントさせて頂きました。