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東京都 新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 (経営改善計画策定による経営基盤強化支援)

2024年度、東京都でユニークな助成金が実施されています。 以前、東京都創業助成金のブログを書きましたが、これは年に二度の募集で、採択率が15%前後という狭き門です。

 

国(経済産業省中小企業庁)の経済施策は「補助金」という名称ばかりですが、東京都や他の自治体では経済政策として「助成金」の名称を使う傾向があります。 国(厚生労働省)の労働者施策としての「助成金」と混同してしまいます。

何がユニークかと言うと、①今年度毎月募集があること(計12回)、②他の補助金では対象外になる経費(原材料、不動産賃借料など)も対象になることです。(東京都創業助成金も不動産賃借料や人件費まで対象)、③事業計画書の書面審査を通過すると面接審査がある(東京都創業助成金と同様)

ただし、採択率はどれだけ応募者数があるかによりますが、創業助成金並みの低い採択率になるのではないかと予想します。

 

公募要領の概要

事業目的

「中小企業は、コロナ後の需要回復や消費者ニーズの変化への即応が喫緊の課題となっていることと、エネルギーおよび原材料価格や人件費の高騰が長期化しており、課題が山積していることが背景として、都内中小企業者が創意工夫を活かして、既存事業を深化・発展させる計画を作成し、経費の一部を助成することによって経営基盤を強化することが目的」となっています。

キーワードは、「課題が山積」している状況、「創意工夫」の度合い、「既存事業を深化、または発展」させる事業計画と捉えます。他の補助金でも同じですが、補助・助成事業の目的に沿った事業内容、そしてキーワードを意識することが重要です。

 

事業内容

対象となる事業とは、「既存事業の深化 」と「既存事業の 発展 」に二種類のどちらかです。

 

「既存事業の深化」とは、経営基盤の強化に向け既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組であり、具体的には高性能な機器・設備の導入等による競争力強化の取組、既存の商品やサービス等の品質向上の取組、高効率機器、省エネ機器の導入等による 生産性 の向上 の取組など。

「既存事業の発展」とは、経営基盤の強化に向け既に営んでいる事業を基に新たな事業展開を図る 取組であり、具体的には新たな商品、サービスの開発、商品、サービスの新たな提供方法の導入、その他の既存事業で得た知見等に基づく新たな取組など。

 

分かりにくい表現ですが、超有名なアンゾフの成長ベクトル(市場 X 製品・商品による4種類の成長戦略)の中の、「既存事業の 深化 」は市場浸透戦略、「既存事業の発展 」は製品・商品開発戦略に重点を置いていると推察します。 東京都の経済政策なので、地理的な市場拡大(他県や海外)への拡大にはあまり重点を置かないのかも知れませんが、既存市場での新しいユーザーやニーズに対応することを全体の事業計画ストーリーに味付けすることは有効だと考えます。そして、前提としての既存事業、自社分析(SWOT)、課題を纏めるところはどの補助金でも同じでしょう。

 

助成金額

助成対象経費の3分の2で、最大800万円

持続化補助金(50万円~200万円程度)より大きく、ものづくり補助金・事業再構築補助金に比べれば上限が低いとレベルです。

スケジュール

・申請受付は、毎月4日前後から13日前後の約10日間(1最終日は16時まで)

・書類審査は翌月(書類審査の結果連絡は翌月後半になるまででしょう)

・面接審査(1時間程度)は翌々月上旬

・交付決定は、翌々月末

・助成事業期間は、交付決定から1年以内(最大1年の意味)

・助成事業完了後、原則的に一ヶ月以内に実績報告

・完了検査・助成額決定後し請求の一か月後に、やっと助成金に支払

 

と言う訳なので、申請から助成金の入金まで、1年半はかかると見ておいた方が良いでしょう。

申請要件

・中小企業の定義に当てはまること

・法人だと本店、または該当事業を行う支店が都内にあること、個人事業主だと納税地が都内であること

直近決算期の売上高が、「 2019 年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較 して減少している、又は直近決算期において損失を計上していること

ほとんどの中小企業者は当てはまると思いますが、過去の売上高か損失の実績なので、もし当てはまらない事業者は応募資格がありません。

他にも細かい要件がありますが割愛します。

 

対象経費

原材料・副資材費:製品やサービスの改良等に直接使用し、消費する原材料、副資材、部品等の購入 に要する 経費であり、これは珍しい対象経費です。細かく考えると、材料在庫の確認で実績報告時に提出する資料が増えそうです。

機械装置・工具器具費:購入費だけでなく、当該期間中のリース・レンタル費用も可能

●委託・外注費:本業ではない業務の外注や、「創意工夫」で悩んだとき外注する手がありますね。大学や研究機関との共同研究の場合は契約が必要、市場調査の外注も可能

●産業財産権出願・導入費:特許権、実用新案権、意匠権、商標権の出願に要する経費

●規格等認証・登録費:改良等をした製品・サービスの規格適合、認証の申請・審査・登録に要する経費

設備等導入費:本事業の取組に直接必要な設備・備品等の購入費及びそれらの設置工事等に直接必要な経費

システム等導入費:本事業の取組に直接必要なシステム構築、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウド利用等に要する経費となっていますが、細かく対象外が多いので注意が必要です。

●専門家指導費:本事業の取組について、外部の専門家から専門技術等の指導・助言を受ける場合に要する経費。ただし、この経費で申請した場合、証拠書類を揃えるのが面倒です(例えば一日4万円の専門家経費を40万円で申請すると10日分の証拠書類が必要、委任契約書も必要)

●不動産賃借料:本事業の取組に必要な事務所、施設等を新たに借りる場合に要する経費、新たに借りる場合に注意

販売促進費(上限200万円):Webサイト制作費、印刷物製作費、動画制作費、広告費(Web広告含む)、他にもいろいろあり。 上限200万円ですが、これは助かる事業者が多いでしょう。

●その他経費(上限100万円):上の経費のどれにも属さない経費と定義されていますが、これは選択しない方が良い気がします。

ほとんどの事業者は、上記赤字の5種類の経費でカバーできるのではないかと推測します。(あまり無理に経費の種類を増やすと、煩雑になるので注意)

 

申請方法

Jグランツ電子申請だけです。

今はほとんどの事業者が持っていると感じますが、GビズIDプライムが必要です。無ければ申請できません。

 

審査ポイント

あまり詳しく書かれていないのですが、ざっくりした下記表現になっています。

・ 深化性・発展性: 既存事業の深化・発展 に資する取組か

・市場性: ポストコロナ 等 における 事業環境の変化前後の 市場分析は十分か

・実現性: 取 り 組 むため の体制は整っているか

・優秀性: 事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか

・自己分析力: 自社の状況を適切に理解しているか

全体的な合理性、相当性、妥当性、実現可能性が必要なことはどんな事業計画書にも共通するでしょう。そして、当職が意識する大きなポイントは書類の体裁(読み易さ、明確さ、図やグラフの活用、イメージし易さ)です。本公募要領のような文字だらけに書類は審査員によっては飽きてきますからね。

考察

どれくらいの予算規模で、採択率はどれくらいになるか考えてみます。

年間で採択者の目標は500者という噂があります。平均して500万円(800万円で申請しても実施不可や削られるのが常です)とすると25億円レベルとなりちょっと小さいですね。年間5000者の間違いではないかと推測します。 合計12回公募がありますが、あまり周知されていないので、第1回から4回は申請者数が少なく、7月から増えていくでしょう。 毎回、採択者数の上限を決めているそうなので、その上限数も増えていくのでしょう。または最初は採択率が高いかも?

怖いのは、毎月3日から14日までの申請期間ですが、採択者数に達したら、後からの申請分は書類審査にも入らない可能性があり、できるだけ3日から5日くらいに申請した方が良いことになります。7月申請(12日まで)も9日朝時点で既に申請受付終了になっていました。これはクレームになるレベルではないかと思います。

 

もしかするとこの事務局はもうパンクしているのかも知れませんね。2次下請けか3次下請けとして、委任を受けた中小企業診断士が何人いるのか知りませんが、書類審査や面接審査以外にアドバイザー派遣が二回、そして実績報告のサイクルを12回繰り返すので、延べ2年間くらい大忙しになるでしょう。