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事業再構築補助金の事業計画づくり②

従来の小規模事業者持続化補助金は、個人事業主も対象に広告宣伝費やHPづくりにも使える補助金でしたが、補助額は50万円か100万円でした。 補助額が数百万円から1,000万円のものづくり補助金は、新しいものづくり・サービス開発の為の設備投資に重点を置き、広告宣伝費は原則不可で、個人事業主には縁の薄い補助金でした。

しかし、令和2年第3次補正予算として成立した事業再構築補助金は新しい補助金制度になっており、アフターコロナ・ウイズコロナを睨んだ思い切った事業再構築を要件として、建物改修費、設備費、ITシステム費、外注費、広告宣伝費など幅広く、且つ100万円以上の補助金です。

前のブログ「事業再構築補助金の事業計画づくり①」に続き、実際に事業計画を作成する上で私がポイントだと思うことを、だらだらと書かせていただきます。(補助金はこう書けば必ず採択されるものではありませんので、ただの私見です)

 

1.審査項目・加点項目の確認

前のブログに書いた事業再構築パターンのストーリー・方向性が決まったら、次は公募要領の最後の方にある審査項目・加点項目の確認をします。公募要領を1ページ目から読んでいると途中で挫折して辿り着けないほど後ろの方です。しかし、抽象的な文章なので、私見を入れて下記します。

・適格性: 対象になる事業者かです。コロナ影響による売上減少、付加価値額を年平均3%など、

・事業化点:補助事業の実現可能性(ヒト・モノ・カネ・情報・ノウハウの経営資源があるか、誰に何をどうやっての事業ドメインが明確か、市場ニーズ・競合他社を掴んでいるか、実現性が高いか、競争力があるか、その事業を推進するヒト・組織があるかなど)

・再構築点:どの事業再構築パターンか明確で、合理的、且つ実現性が高いか。「思い切った」をキーワードにして、新規性、革新性、独自性(この三つは経営革新計画の主要三本柱)をどう絡めて表現できるか

・R3年の緊急事態宣言の影響を受けた事業の加点(一時支援金の50%以上売上減少より低い30%以上の売上減少です) 尚、小規模事業者に向けの「緊急事態宣言特別枠」は加点ポイントだけでなく、もし不採択でも通常枠で再審査してもらえるという特典があります。

・公募要領には書いていませんが、過去の被災認定や、都道府県による経営革新計画の承認を受けた事業者は加点されると推測します。(他の補助金で加点され、本補助金では加点されない理由がない)

 

2.基本情報の収集

過去3期分の財務データ(B/S、P/L、販管費など)、企業概要・沿革・商品・BP・顧客・市場・競合他社などの情報を集めます。 商品、展示会などのイベント、従業員や企業の外観などの写真も使えそうなものを探します。 情報を集めても使えるものは半分もないと覚悟しながらかき集めていると、ぼんやりとその企業の文化、経営者の人柄、従業員の士気などが伝わってきて、白黒っぽい事業計画に色付けができます。 財務データは、既にExcelシートに計算式を入れてあるので、成長性、安全性、効率性の悪化・改善が数値(%)で表せるし、今後3~5年の数値計画に展開し易くなります。

 

3.認定支援機関への相談

ある程度情報が集まって事業計画の下書き中に、お近くの認定支援機関に相談が必要です。商工会議所・商工会が最も相談しやすいと思います。相談しながら、事業計画書が完成したら「認定支援機関による確認書」を発行してもらわなければなりません。

また、補助金額が3,000万円を超える申請については、「金融機関による確認書」も必要になるので、その場合は認定支援機関を兼ねている金融機関、たとえば信用金庫などに最初から相談した方が良いでしょう。

商工会議所・商工会は相次ぐコロナ関連の支援業務に超多忙、金融機関は既存顧客優先なので、この確認書を素早く取得できるかが実務上の重要なポイントになるでしょう。

ただ、当職の場合、経営革新支援機関に認定してもらえたので、申請者と既に何か月間も考えて作ってきた事業計画を事業再構築補助金申請書へアレンジ、ブラッシュアップして、自分で自分が作った事業計画書をチェックするということをしています。

 

4.事業計画の構成

まだ、申請様式が公表されていませんが、凡そ下記のような項目でまとめていくことになるでしょう。

企業概要・市場概要

沿革、過去の業績、経営方針、トピックス、そして市場概要など、写真や図を使って2ページ分くらい書きます。

市場概要はPESTなどのデータを探して、関連する気づいたこと(必ずあります)を書く程度です。

審査員によっては、この導入部分が読みやすいかどうか、興味を持ってもらえるかが鍵の一つだと考えています。

 

経営方針(内部環境x外部環境)

いわゆるSWOT分析で、これが無いと審査員が不安になります。(自社分析もしていないとなる)

強みのところはVRIOを意識して持続的競争優位性があればベスト。強みを生かして機会を掴む方向性を中心にして、弱みの克服や脅威への対処にも触れても良いでしょう。 ここで、過去の経営方針を改める提案をすること、現在の事業ドメインとの違いを明確化した上で、補助事業内容を話し合うことができ、議論が拡散せずに済みます。 ここは図を使ったりして2ページは超えるでしょう。

 

現状の課題

コロナ禍の影響は、グラフで月別売上推移、場合によっては事業セグメント別や顧客別に分解していきます。 主要顧客の状況、キャンセル事件、来店してくれない苦しみなどを絡ませ、対面型事業の限界や今後の不安について審査員の同情を呼び起こす内容を入れたいです。 また、コロナ前からの課題、アフターコロナを睨んでの課題、将来像を考えての課題などを挙げて多面的に検討し、補助事業に取り組む動機に繋げていきたいです。

 

補助事業の内容

ここがミソです。 補助金をもらいたいから考えた補助事業は内容が薄くになってしまいます。 現状の課題の深堀りし、経営方針に沿って、自社の強みをどう具体的に活かすか、不足する経営資源をどう具体的に補うかを何度も考え、経営者の気持ちをその気にさせないと補助事業の内容は煮詰まらないと思っています。場合によっては、助言ではなくなり、「こうしないさい」「こうすべきです」とその理由を説明し納得していただくことに時間を掛けます。

市場ニーズや市場の捉え方・予想、推進体制、商品開発アイデアなどはカラフルで分かりやすく図式化すること、数値があればグラフ化することが重要だと思っています。(文字だけの補助事業内容なんて読む気がなくなります) ページ数は2ページは超えるでしょう。

また、補助事業の経費を何にどうやって使うのか、なぜそれが必要か、価格の妥当性などを書き込んでいき、補助事業全体の合理性、バランス、実現可能性を信じてもらえるような内容を目指します。

実現可能性については、場合によってはコンティンジェンシープランのようなことを書くことも考えます。バラ色の奇麗過ぎる事業計画より、もしもの場合を想定する事業計画の方が、良く考えている感があるはずです。

 

補助事業スケジュール

これは時系列の表(工程表)を作り、それぞれのアクション項目の説明をいれたら1ページになるでしょう。

 

数値目標

過去の財務データから、販管費明細を含めたP/Lのシミュレーションを行います。既存事業と新規事業に分け、売上は客数x客単価、市場ニーズや市場規模・競合他社とのシェア競争などから客数の伸びや客単価の変化に意味を持たせます。経費もできるところは理由付けして増減させ、減価償却費と支払金利を忘れないようにします。経費の中の役員報酬は適当にしますが、人件費(従業員数)には注意が必要。付加価値額は営業利益+人件費(役員報酬含める)+減価償却費を意識して、ここで単純ミスをすると補助事業全体の信用力が低下してしまいます。

申請様式がものづくり補助金並みになるのであれば、この数値目標は過去実績含めてExcelデータを張り付けて1ページ、その説明に1ページ程度になるでしょう。

 

補助事業の効果

最後に期待される効果を箇条書きで、政策点や相乗効果を意識して書きます。 ちょっと現実離れしても良いくらいの夢を膨らませることもあり得ます。

 

5.採択された後

事業再構築補助金はものづくり補助金並みのスキームになると予想しています。 即ち、採択されたとしても、そこからの交付申請が一苦労です。 設備費などの見積(相見積かも)を入手し、補助事業計画のブラシュアップが必要になります。交付申請の承認に1か月以上かかることも予想しますので、早めに事前着手申請(令和3年2月15日以降の支出が対象になる)をすべきでしょう。

また無事に補助事業が完了しても、報告書+証拠書類の作成・纏めで、また労力が掛かります。

私は、補助金申請を頼まれても、事務処理の煩雑さ、根気の必要性、多少の理不尽さを耐える忍耐力、約1年後に給付されることなどを説明することにしています。 途中でギブアップされたら悲しいですからね。

 

実際の申請についての気づいたことを「事業再構築補助金の事業計画づくり③」で書いています。