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補助金申請書作成・申請代行について

補助金申請書作成・申請代行について

2年以上前に書いた「補助金申請書作成・申請代行についての考察」というブログはコンスタントにアクセスがあるので、補助金申請サポートを行っている多くの事業者やその支援者の方々に読んでもらっているものと推測しています。

 

今は事業再構築補助金、ものづくり補助金、持続化補助金など経済産業省中小企業庁の補助金すべてがJグランツの電子申請になっており、その代理申請ができるのかどうかが話題になることがあります。

 

一方、昨年末辺りから、各補助金の公募要領に「代理申請は一切認めない」旨の文章が追加され、たとえば持続化補助金では「代理申請は不正アクセスとなるため、一切認められず、当該申請は不採択となる上、以後の公募において申請を受け付けないことがあります。」とアンダーラインで強調されています。

 

当職は中小企業診断士の知識と経験でクライアントの経営分析から事業計画に関する助言を行い、行政書士として委任状をもらい事業計画書他の申請書類を作成し、クライアントを横にしてパソコン入力を行ったこともあります。 これが違法だとはまったく考えていないのですが、改めて今月、中小企業庁、および日本行政書士連合会から下記通達が発行されましたのでご紹介し、当職の見解を述べます。

 

 

中小企業庁の文章

日付の無い、誰宛てかわからない不思議な中小企業庁の文章です。「行政書士が代理人として補助金申請書類を作成することは妨げないが、Jグランツ電子申請では代理機能はありません」と簡潔な内容です。 

 

Jグランツは4年ほど前に経産省が作った電子申請のシステムで、事業者(法人、個人事業主)がGビズIDを登録し、今後国や地方自治体の様々な電子申請の利用に広げていくという、日本政府が推進するデジタル化の二丁目一番地の施策の筈です。(一丁目一番地はマイナンバーでしょう) GビズIDには「gビズIDプライムアカウント利用者が受任者となって、委任者(GビズIDアカウントの保有有無に関わらず)の代理でGビズID対応の行政サービスへの申請を可能にする機能」があるのに、なぜJグランツ電子申請では代理機能が無いと表現するのかわかりません。

 

日本行政書士会の通達

下記は日本行政書士会連合会が各都道府県の行政書士会へ令和6年2月14日付け通達で、上の中小企業庁の文章が添付されています。行政書士法の趣旨に沿って、「国民の利便性に資し国民の権利利益の実現に寄与」する代理行為の一つが補助金申請支援であり、その支援には申請書類作成から代理申請まで含まれると理解しています。

 

では、実際にJグランツの電子申請は代理ができない状況はどうなっているのか疑問が残ります。噂ですが、電子申請した端末IDをチェックして、同じ端末で複数電子申請を行っているか確認しているとのこと。技術的に簡単にできるでしょうが、それで採択・不採択の審査を行うことは不当な行政行為だと考えます。

 

電子申請の代理は?

結局、「代理申請は不正アクセスとなるため、一切認められず、当該申請は不採択となる上、以後の公募において申請を受け付けないことがあります。」が現在、有効なのではないかという疑問が残ります。

 

パソコンに慣れた人なら、GビズIDの登録(個人事業主はオンラインでも可能)、および各種補助金申請のJグランツ電子申請の入力はさほど難しくないと思いますし、スマホでもできる仕様になっているようです。しかし、国民の何割かの人にとっては困難な申請でしょうし、そのため申請を諦めざる得ない事態が出ている(申請する権利を奪われている)と考えられます。デジタル化のお陰で不便さを感じる国民が一定数は存在すると思います。

 

一方、GビズIDの委任機能について調べてみると、現在たった12件の申請しか対応していません(今月上旬では9つだったので少し増えている)。 委任機能が働く申請の中では、行政書士の典型業務の一つである建設業許可は申請件数が多く便利になったでしょうが、他はマイナーな申請や地方自治体(市レベル)のものだけです。 なぜ、何千、何万種類もあるといわれる行政サービスの申請で委任機能が使えないのか、GビズIDのヘルプデスクに尋ねてみると、「使えるかどうかはシステムを構築している申請先のシステム、申請方法次第となります。現在(今月上旬)、9つの行政サービスで委任機能を有しております。そのほかの行政手続きの電子申請方法についてはわかりませんので、申請先にご確認をお願いします。」との回答。 結局、今のところ中小企業庁の補助金には委任機能は使えないということです。

 

これは「国民の利便性に資し国民の権利利益の実現に寄与」する代理行為の一部(申請代理)を、行政サービスが個別に制限している、または行政の不作為ということになるのではないでしょうか?

 

一方、千葉県の経済政策関連の補助金では独自の電子申請システムがあり、行政書士による代理申請(委任状を添付)は可能でした。 GビズIDとJグランツよりもよっぽど便利です。 

 

考察

今回、今更ながら「行政書士が代理人として補助金申請書類を作成することは妨げない」が明確になった訳ですが、行政書士資格の無い人が事業計画書等を作成した場合はどうなのでしょうか? 固く考えれば行政書士法違反になるのでしょう。しかし、無資格のビジネスコンサル、中小企業診断士、税理士から、経営学部などの学生さんまで能力とセンスのある人が、事業者さんの代わりに事業計画書を作ってあげることはあるでしょう。それは補助金申請だけはでなく融資申請や各種許認可申請など他の用途も考えられます。 

 

結局、誰が補助金申請書類を作成したかというより、その事業者が自分の意思や考えで書類を作成したかどうかがポイントだと考えます。そして、誰の指で、どの端末を使って電子申請を行ったかはまったく意味が無いでしょう。「あくまでも本人申請が前提」は、他の許認可申請や契約全般でも同じです。だから民法で代理制度が定められているのでしょう。

 

デジタル庁が発足して数年経ちますが、個人ならマイナンバー、法人や各士業ならそれぞれの固有のIDを使って、電子署名を有効活用させ、本人作成・申請または代理作成・申請を明確に判別できるようにすることが必要でしょう。行政サービスで個別に様々な電子申請システムがあり、各々のシステムで利用者登録しパスワード設定などがありますが、すべて公のIDによる管理にすれば無駄な行政コストも省かれるでしょう。IDとパスワードだならばセキュリティ面の不安があるのであれば、人体認証を付け加えるなどの工夫も有効でしょう。 少なくとも、紙文化が残っていながら、押印だけを省き、IT技術を使いこなしていないこと現状の方がセキュリティ上のリスクが高いといえるでしょう。

 

補助金などの給付行政では、不正受給・詐欺事件が多いことが深刻な社会的問題になっていますが、不正・詐欺を見抜く工夫や努力も足りていない気がします。 設備関係やIT事業者の中には、自社の商品・サービスを購入してもらうことを前提として、補助金の申請書類作成から(代理)申請まで行うなどの営業トークを行うことは極めて自然です。 電子申請の中で、誰が支援者か、誰が代理人(弁護士、行政書士、社会労務士など)かを明確にし、その申請内容に疑義があれば、申請者または代理人に確認するなどを行えばかなりの詐欺は防ぐことができるのではないかと考えます。事務局担当者に質問力や見抜く力が必要でしょうが、申請件数が多いので、そこまで丁寧にやれないのかも知れません。残念ですね。

 

もし行政側に能力が無いのであれば、外注に任せっぱなしの補助金という給付行政ではなく、別の方法、たとえば税金や社会保険料などの軽減で中小企業の生産性向上を狙った方が良いのではないかと愚考します。 補助金運営を外部委託している費用はITシステムを含めて毎年何百億円レベルでしょうし、不正を調査する費用や労力を考えると、無駄な行政コストだと考えます。

 

令和6年5月追記

補助金支援事業が拡大し、「補助金申請代行サービス12選」のような情報もあります。

社労士、行政書士、税理士のような各法律による代理業務の範囲のサービスのようですが、今年に入り数件ですが、ビジネススキームが不明瞭な補助金支援事業者から協力のお話があり、ビジネススキームを聞いてみました。 共通する抽象的な特徴は以下です。

・経産省のもづくり補助金、事業再構築補助金、持続化補助金がメイン、支援件数は年間数百件

・クライアントとのコミュニケーションは当該支援事業者が行い、外部委託者(再委託者)の士業へ情報提供し、事業計画書などの作成を行う。場合によってはオンライン打ち合わせに参加可能(ただし、当該支援事業者の社員の立場)

・外部委託者(再委託者)への報酬は、事業計画書作成だけで10万円から50万円レベル、交付申請や実績報告は別途数万円から10万円レベル。 (ということは、申請事業者であるクライアントが当該支援事業者へ支払う報酬はもっと高額になり、国から支払われる補助金額の20%から50%レベルではないかと推測)

・外部委託者(再委託者)の立場になる当職が、クライアントからの委任状による事業計画書作成や申請書類・報告書類の作成などを要求し、それがないと補助金適正化法に抵触または行政書士法に違反する可能性があることを説明すると、「今回の話は無かったことにします」と途切れてしまいます。

 

当職の経験では、申請事業者の様々な業種や経営状況の中で、申請から受給まで1年以上かかる流れの中で、特に大きな補助金額の場合、最初の申請だけでなく、交付申請、変更申請、そして実績報告での理由書作成、そしてその後数年間のフォローアップと、かなり複雑で深くかつ長期的な支援が必要になります。 そんな業務になることが多いのに、上記のような補助金支援事業者経由でどこまでコミュニケーションが維持できるのか甚だ疑問です。 申請事業者との間のトラブルも多発しているでしょう。 

 

結局、国の巨大な補助金予算に群がるハゲタカのような印象を持ちます。

 

Jグランツの電子申請では、支援事業者名やその報酬額を入力することもあるし、「申請事業者が自ら作成し申請する」ことを前提にしているようですが、ザル状態なのでしょう。たとえば、事業再構築補助金の最新の公募要領を読むと「認定経営革新支援機関の確認書は、その機関の担当者が直接行うこと」が明示されているので、よっぽど外注を使う例が増えたのでしょう。

 

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コメント: 1
  • #1

    北島コウ (金曜日, 03 5月 2024 07:51)

    こんにちは、昨年、東京都行政書士会に所属したばかりの駆け出し者です。
    私ももともとICT業界におり、デジタル関係のコンサルをしながら、行政手続きのお手伝いもしようと取り組んでいますが、最近、小規模事業者補助金等の支援業務をご依頼いただけるようになってきました。
    そんな中で、まさに申請システムにおいて代理申請ができないことを疑問に思い、補助金事務局に問合せたり、所属する行政書士会支部にも「行政書士の役割が軽視されてるんじゃないか」と意見したりしました。それらに対し納得する回答は得られていませんが、櫻井先生のこちらのブログを拝見し、非常に合点がいった次第です。
    国民のサポートのためにある行政書士という役割が、デジタル化によってかえって妨げられているように感じられ、本当に納得がいかないです。
    行政書士連合会の文書により、行政書士による申請代行は差支えないとされていることを知り、安心しましたが、それでも例えば事業再構築補助金のホームページでは、申請者のPCのIPアドレスをチェックしたところ1台のPCから多数の申請がされていることが確認されたため調査する、といった脅しともとれる記載もあります。萎縮しちゃいますよね。
    (ちなみに行政書士連合会の文書には「会員に周知せよ」と書いてありますが、そんな周知は受けていないですね。)
    突き詰めて調査される櫻井先生の真摯さに感服しております。
    今後も参考にさせていただきます。