相続手続きの基本12

突然のお別れになってしまった場合、何から手をつければいいのか茫然としてしまいます。相続の手続きには期限のあることや、きちんと書類を集めないと手続きが進まないなどのトラブルが発生します。相続手続きの基本的な12事項についてご説明します。


1.死亡届の提出

死亡後7日以内に、医師が発行する「死亡診断書」または「死体検案書」を、故人の本籍地、死亡地、届け出をする方の所在地を管轄するいずれかの市町村役場へ提出しなければなりません。 死亡届が役場に受理されると、「死体埋火葬許可証」が出されのが一般で、この許可証がないと、お葬式(火葬)を行うことができません。また、死亡届を提出すると、一週間程度かかりますが死亡したことの情報が戸籍へ繋がり、戸籍の除籍謄本が入手できるようになります。

尚、病気やケガなどで死因が明白な場合は医師による「死亡診断書」、死因が不明な場合など警察に委託された医師が解剖後にその証明書として「死体検案書」が出されます。

 

2.遺言書の確認

まずは故人の遺言書を探すことが必要です。有効な遺言書による「指定相続」は、民法に定められた「法定相続」よりも優先されます。遺言書には、全文自筆の「自筆証書遺言」、公証役場にて作成する「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」と三種類があります。いずれも最新の日付のものが有効となりますが、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所にて「検認手続き」が必要で、この手続きに約1ヵ月かかります。 また、自筆証書遺言が封印されて見つかった場合、検認前にうっかり開封してしまうとその遺言は無効になり、家庭裁判所から5万円以下の過料が科されることもあるので注意が必要です。

あわせて公的年金、私的年金、生命保険や損害保険といった年金や保険関係の内容も確認しましょう。 いずれも証書や関連書類を探し、連絡先に問い合わせをし、亡くなった事実を伝え、その後どういった手続きをすべきか確認する必要があります。尚、生命保険金は相続財産ではありませんが、相続税の課税対象になります。

 

3.遺産分割方法の確定

遺言書が無い、又は有効な遺言書が無く「指定分割」ができない場合、遺産分割方法は、相続人全員による遺産分割協議による「協議分割」、協議が成立しない場合は家庭裁判所による「調停分割」、調停によってもまとまらない場合は家庭裁判所による「審判分割」となります。「協議分割」が最も一般的です。

故人の遺産分割を確定し所定の手続きが完了するまで、金融機関は故人の金融資産(貸金庫含む)を凍結します。 金融機関は冷たいという訳ではなく、その相続財産は相続人全員の「共有」となり共有者全員の同意が無ければ、相続人の中の一人が単独で引き落とし、送金、名義書き換えなどができない訳です。 これはたとえ個人の配偶者であっても同じです。

 

4.相続人の確定

故人の生まれてから死亡までの戸籍謄本・除籍謄本を集め、相続人の確定を行います。 配偶者、嫡出子、非嫡出子、養子、直系父母、兄弟姉妹などを確認し、相続人を確定し「相続関係説明図」を作成します。

まず除籍謄本を入手し、前戸籍の記載があればその市町村へ問い合わせ、前戸籍謄本を取り寄せます。前戸籍に前々戸籍の記載があれば同じように取り寄せなければなりません。80歳以上の昭和初期生まれの方の場合、明治時代に作られた戸籍まで遡ることがありますので、戸籍謄本集めだけで1か月くらいかかることがあり、行政書士はその代理をすることができます。

 

5.相続財産の全容を把握

不動産、預貯金、有価証券といったプラス財産(積極財産)だけでなく、借入金・未納金・未納税金といったマイナス財産(消極財産)も相続の対象となり、「相続財産目録」を作成します。 特にマイナス財産を相続するということは、その負担を被るということです。プラス財産にはその名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。上記2、3、4の手続きと同時進行で進めます。

 

6.寄与分と特別受益の有無の確認

相続人間の公平を保つため、「寄与分」と「特別受益」の有無を確認します。「寄与分」は被相続人の財産の増加や維持に特別の働きをした場合の貢献分。「特別受益」は被相続人から特別の援助を受けていた場合の贈与分(生前贈与)。

「寄与分」は相続財産から控除し財産分割後、寄与者の相続分に加算する。「特別受益」は相続財産に加算し、遺産分割後に特別受益者の相続分から減算する。 生前贈与については相続人が相続開始前3年間に受贈した分が対象で贈与税控除(110万以下)も含む。(相続人以外の孫、甥や姪などは対象外)

 

7.相続放棄・限定承認

相続財産がプラス財産よりマイナス財産が多い場合、そのマイナス財産をすべて相続することは酷です。そこで、相続の開始(亡くなったこと)があったことを知った日から3ヶ月以内であれば、「限定承認」や「相続放棄」という手続きを家庭裁判所へ申し出ることができます。3か月を過ぎると自動的に「単純承認」したものとみなされ、マイナス財産も相続することになります。

「限定承認」はプラス財産(資産)の範囲内でマイナス財産(負債)を承継することで、相続人全員により申し出る必要があります。一方、「相続放棄」はプラス財産もマイナス財産もすべて承継しないことで、各相続人が単独で申し出ることができます。

 

8.準確定申告

亡くなった方が自営業者など確定申告を行っていた場合に必要になる手続きです。 対象者が亡くなった時点で申告すべき所得税がある場合、4ヶ月以内に準確定申告を行わなければなりません。

 

9.遺産分割協議書の作成

遺言書が見つからず、相続放棄・限定承認をしなかった場合、残された相続財産は遺産分割協議によって協議分割を行うことになります。 遺産分割協議の書き方については特にルールは無く、相続人全員が同意する内容であれば、どういった方法でも構いません。 無事、遺産分割協議の内容がまとまったら、遺産分割手続きのために「遺産分割協議書」を作成します。 誰がどの財産をどれだけ相続したのか等、第三者に対しても明確にわかるよう記載し、相続人各人が署名し、実印で押印します。

遺産分割協議は相続人全員参加が前提、必ず上記4.相続人の確定と5.相続財産の全容確認後に協議を行うようにしましょう。 尚、有効な遺言書があったとしても、遺産分割協議によって遺言と異なる内容で合意することも可能です。

 

10.名義変更などの手続き

目の前にある現金は、それを分割するだけで済みますが、銀行口座、有価証券、不動産などの場合、解約・売却・名義変更・登記変更などの手続きを、金融機関毎に、また法務局で行わなければなりません。その際、故人の除籍謄本、「遺産分割協議書」、「相続関係説明図」、「相続財産目録」、および各相続人の戸籍謄本、住民票、実印の印鑑証明書などの提示を求められます。金融機関によって所定の手続(用紙)や必要書類がある場合もありますので、個別に提出書類の確認が必要です。

 

11.相続税申告

相続税は相続開始日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の死亡の時における住所地を所轄する税務署長へ申告します。 相続財産総額から「遺産に係る基礎控除額」(3,000万円+600万円x法定相続人の数)を差し引いて課税遺産総額を計算します。 相続財産総額が基礎控除額以下の場合は相続税申告は不要です。 また、相続税には様々な控除があり、基礎控除以外の特例などによる減税によって相続税が0円になる場合でも相続税申告が必要です。

基礎控除以外の特例:「配偶者の税額控除」(配偶者は1億6,000万円まで控除)、「小規模宅地等の特例」(居住用だと330㎡まで80%減額)、「贈与税額控除」、「未成年控除」、「障害者控除」、「相次相続控除」(10年以内に2回以上の相続)、「外国税額控除」など

ブログ「相続税ってどれくらい?」をご参照ください。

 

12.遺留分減殺請求

民法では一定の相続人が最低限の遺産を受け取ることができるように、相続財産総額の2分の1や3分の1の「遺留分」を法定しています。 遺言によってこの遺留分を侵害された法定相続人は遺留分を取り戻す「遺留分減殺請求権」があります。 ただし、この遺留分減殺請求には時効があり、相続があったことを知った日から1年、または相続開始から10年間と定められています。

遺留分権利者は配偶者、第1順位(子)、第2順位(直系尊属)までで、第3順位(兄弟姉妹)には権利がありません。


上記8、11の税務申告についての詳細については税務署、または税理士にご相談ください。


法人向け補助金・助成金のお問い合わせ
法人向け補助金・助成金のお問い合わせ